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全日本モトクロスライダーってどんな人? LMX #4本田七海

アグレッシブな走りとスピードで競い合うモトクロスライダー。中でも、日本最高峰の舞台となる全日本モトクロス選手権はライダーたちの憧れでもあります。そんな全日本の舞台で活躍をするライダーは、どんなきっかけでモトクロスを始め、どんな練習を重ねてきたのでしょうか。この記事では、ダートフリークがサポートする全日本モトクロスライダーをインタビューし、その魅力を掘り下げていきます! 

今回お話を伺ったのは、全日本モトクロス選手権レディースクラス ゼッケン4番の本田七海選手。2019年全日本モトクロス選手権レディースクラスチャンピオンであり、今もなおレディースクラスを引っ張る存在です。

水泳かモトクロスか

ライドハック編集部(以下:編):本田選手、本日はよろしくお願いします!

本田七海(以下:本):よろしくお願いします!

編:早速お話を聞いていきたいと思います。まず、モトクロスを始めたきっかけは何ですか?

本:モトクロスを始めたきっかけは父親です。元々父親がモトクロスをしていて、コースに連れていってもらってた……というよりは連れて行かれてました(笑)。実は最初からモトクロスが好きだったわけじゃなくて、初めは嫌々やらされてたって感じで、現在のように、全日本に参戦し続けるとは思ってませんでした。

編:嫌々だったんですか! そこからどういう経緯でモトクロスにハマっていったのですか?

本:モトクロスを自発的に「やりたい!」って思ったのは、あるスクールに参加したことがきっかけでした。私が6歳くらいの時に、当時全日本モトクロス選手権のレディースクラストップライダーが教えてくれるスクールがあって、そこにずっと憧れていた奥野歩希選手が来るということを聞いて参加しました。参加してみると、ものすごく楽しくて。モトクロスってこんなに楽しかったっけと、そこでモトクロスの楽しさに気づいて、本格的に乗りたいって思うようになりました。

編:モトクロスを始めた当時は、水泳もやられていたというお話を聞いたことがあります。当時は水泳とモトクロスを両立していたという感じでしょうか?

本:2歳からずっと水泳をやっていて、元々はモトクロス選手よりも水泳選手になることを目標に取り組んでいました。中学に上がってからも部活に入る暇はなくて、月曜日から金曜日は水泳、土日はモトクロスという生活を送っていました。ただ、当時の自分としては、モトクロスは水泳の次という感じだったので、水泳の試合が土日にあれば、バイクには乗らず水泳を優先していましたね。

編:かなり水泳に力を注いでいたのですね。そこからモトクロスに集中したきっかけは何だったのでしょうか?

本:高校生になる時に、水泳を本気で続けるなら水泳が強い私立校に行こうと決めていて、逆にモトクロスを続けるなら、(モトクロスを続けるために)お金もかかるので公立にしようという選択肢が家族の中でありました。そこでどちらか1つに絞るとなった時に、自分としては水泳よりもモトクロスが楽しく感じていて、続けたいと思ったのが決め手でしたね。

編:モトクロスの楽しさが水泳を上回ったんですね。

本:モトクロスで怪我をすると、当然ながら水泳にも影響が出ていました。泳げない期間で落ちた体力やスピードを元に戻すのってすごく時間がかかるんです。進路に迷っていた当時はちょうど怪我の影響が続いた時期で、なかなか水泳の実力が戻らないことや、下の世代から自分より速い選手が出てきていたことなどに対して悩みが多くあった時期でもありました。反対に、モトクロスは自分でも速くなってる実感があって、すごく楽しかったんです。

チームを通して競い合う強さを身につけた

編:全日本モトクロス選手権に出始めたのはいつごろですか?

本:中学2年生くらいだったと思います。6歳の時に受けたスクールでモトクロスの楽しさに目覚めてから、練習はもちろん、地方のレースやキッズ向けのレースに出ることでスピードを上げていって、全日本モトクロス選手権に出場、という感じで段階を踏んでいきました。

編:全日本モトクロス選手権に初めて出場した時はやはり緊張しましたか?

本:すごく緊張していたのを覚えています。当時は台数もすごく多くて、予選もフルグリッドで行われていたので、予選通過できるかなとか不安な気持ちが大きかったです。また、全日本の会場は人が多くて、地方選手権とはまた違う雰囲気にも呑まれていました。

編:本田選手といえばTeam KOH-Zで活動してきているイメージが強いのですが、モトクロスを始めた頃からチームに所属していたのですか?

本:モトクロスを本格的にやりたいと思い始めた時から、今所属しているTeam KOH-Zにお世話になっています。元々チームオーナーの辻本さんと父が知り合いで、その繋がりから育成チームであるClub KOH-Zに入りました。Team KOH-Zは育成チームとプロチームがあるのですが、最初は育成チームで練習を重ねて、全日本に出るようになってからはプロチームTeam KOH-Zの一員になって、今に至ります。ずっとここ(Team KOH-Z)一筋です(笑)。

編:なるほど! レースにはチームに入らず親子で取り組むライダーもいますが、本田選手としては親に教わるよりもチームに入って練習をする方が合っていたのでしょうか?

本:そうですね。チームオーナーの辻本さんに教えてもらわなかったら、チャンピオンも表彰台も獲れていないと思います。というのも、自分の性格的にあんまり競ったりするのが得意じゃないんですよね。

編:レースでは激しくバトルしてるので意外です……! 

本:例えば水泳だと自分のレーンが決まってるので自分のことに集中できるのですが、モトクロスのように競ったりとかっていうのは得意じゃなくて。もちろん親に教わってもある程度までは行けたと思うのですが、ここまで成長できたのは辻本さんのおかげだなと思います。

編:辻本さんからはレースでの競い方を教わっていたという感じですか?

本:それもそうですが、メンタル面を強くしてもらえたことが一番大きいですね。今でも気が弱いんですけど、始めた時はもっと弱くて。辻本さんに教わる中で上手くできなくて怒られることもあるのですが、そこで悔しさを感じて、もっと走れるようになりたいって努力していった結果メンタルも強くなっていきました。

編:その厳しさが、本田選手の成長に繋がったんですね。

本:メンタルの鍛え方って人それぞれじゃないですか。辻本さんはそれもわかった上で指導してくれてて、私にはすごく厳しいけど、他のチームメンバーへの指導を見ると優しかったり、1人1人に合わせて指導しているというのが感じられるからこそ、私もその指導を受けて悔しいって思って努力できたんだなと思います。もちろん、怖いと思ったこともありますが……(笑)。

自信=楽しさ

編:いまやレディースクラスの中ではトップライダーという存在ですが、モトクロスを始めてからトップに上り詰めるまで、結果が出ない辛い時期もあったのではないでしょうか。

本:結果が出なくて、楽しくないなと思う時期はありました。そういう時って自分に自信がなくて、十分に練習してても、レースになると大丈夫かなって不安になってしまうんです。先ほども話したように、私は元々気が弱くて自分にあまり自信がなくて、不安から抜け出せれば楽しさを感じたり、何をしてても自信が持てるのですが……。ちょっとしたことでまた不安になってしまって、今でもその影響は感じます。

編:つまり、自信がモトクロスの楽しさに繋がっているということなんですね。

本:そうですね。

編:自信をつけるためには、練習あるのみという感じなのでしょうか。

本:自分にとっては、乗り込むことが一番自信に繋がりますね。一度気持ちが落ち込んでも、乗り込んでいく中で楽しいなと思えるようになることが多いです。

編:毎年オフシーズンにはチームで合宿に行ったり、ストイックに乗り込んでいる印象があります。たしか、本田選手がチャンピオンを獲った2019年にはアメリカに行っていましたよね。

本:チャンピオン獲った年の1年前くらいから、オフシーズンにはアメリカへ行かせてもらっていました。今はコロナの影響などで行けていないのですが……。2019年が一番長くアメリカに行っていた年だと思います。ほぼ毎週レースが行われていたので、練習して、現地のレースに出場して、その経験は全日本ですごく生かされました。

編:例えばどんな部分が?

本:ライディングだと、コースへの対応力ですかね。アメリカのコースはまず広くて、難易度も高いんですけど、走ってる台数も多くて。平日でも土日のオフビ以上に人がたくさんいます。子供やアマチュアライダーの方から速いライダーまでいろんな人が走るので、めちゃくちゃコースが荒れて、ここは同じコースなのかというくらいコースが変化していくので、すごく鍛えられました。

あとは、自分は英語が得意ではないので、まず言語の壁があるなかでのコミュニケーションも自信につながりましたね。最初は不安だったんですけど、意外となんとかなるなと(笑)。そういう点では、アメリカ遠征はモトクロス以外の面でもかなり鍛えられました。日本とは違う環境でバイクに乗って、生活をすることは刺激的だったし、なによりバイクに乗ることがすごく楽しかったのがよかったなと思います。

編:去年(2022年)は惜しくもチャンピオンを逃したことを踏まえると、今シーズンに向けてもかなり乗り込んできたのでは。

本:そうですね。今年(2023年)の開幕戦に向けて、チームオーナーに「乗り込みさせてください」と頼んで、ずっと乗り込んでいました。乗らないのは週2回くらいで、ほぼ毎日乗るという生活を1ヶ月間ほど続けてました。

編:体力がすごい……。

本:めちゃくちゃ体力消耗してました(笑)。乗って、整備して、ご飯食べて、寝る!の繰り返しでしたね。

ダートフリーク製品のおすすめを聞く

編:ここまでモトクロスについて聞いてきましたが、ここからは少し話題を変えて、好きな食べ物や使用しているダートフリーク製品について聞けたらと思います。

唐突ですが、好きな食べ物はなんですか?

本:好きな食べ物を聞かれるといつも悩むんですよね……。スイーツも好きですし、お米も好きで、基本食べることが好きです(笑)。

編:パドックでの様子を見ると、ファンからの差し入れも甘いものが多いイメージです(笑)。

本:そうなんです。とてもありがたいです。

みなさん、レースでの差し入れまだまだお待ちしております(笑)。

ウーマンズ フレックスエアー エフェクトティール 着用

編:ダートフリークの製品といえば、FOXのウエアを着用していると思います。今年からFOX最高峰の「フレックスエアー」シリーズに、レディースサイズが登場して、それを着用されてましたね。

本:そうなんです! これまでフレックスエアーシリーズにはメンズサイズしかなくて、かっこいいな、着たいなと思っていたので嬉しいです。特に今流行りのピタッとしたシルエットがかっこいいですし、実際に着てみるとその着やすさに驚きました。パンツが特に動きやすくて、普通の服を着ているみたいです。

編:マシンにも、ZETAのパーツを使われていますよね。

本:ハンドルバーやブレーキ、クラッチレバーなどを使わせてもらっています。中でも、ピボットレバーはすごく良いです。思い返すと、ピボットレバーはサポートを受ける前の、モトクロスを始めたころからすでに使っていました。特に子供の頃は転倒が多くて、ポテっとコケる時が一番レバーが折れるんですよ。その点、ピボットレバーは可倒式なので、転倒しても折れにくくて、子供の時から愛用してましたね。めちゃくちゃおすすめです! つけてない人がいたらぜひ、今すぐ使ってみてほしい。全然違いますよ!

編:最後に、今シーズンの目標を改めてお聞きしても良いでしょうか。

本:もちろん、チャンピオン獲得です。この目標に向けて乗り込んでいるので、応援していただけると嬉しいです。

編:ありがとうございました!

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アニマルハウス

世界でも稀な「オフロードバイクで生きていく」会社アニマルハウス。林道ツーリング、モトクロス、エンデューロ、ラリー、みんな大好物です。

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