キッズ・ファミリー ヨツバモト レース

ヨツバモトライテク〜モトクロス編〜

ヨツバモトの電動キッズバイク「WOOF」をもっと乗りこなしたい! そんなキッズライダーに向けて、44キッズクロスMOTO-Eクラス2年連続チャンピオンの丹羽群青くんがライディングテクニックを伝授 

ヨツバモトはダートフリークが手がける電動キッズバイクブランドです。ストライダーからエンジンバイクへの橋渡しとなる「Meow」を皮切りに、Meowより大きいサイズのマシンが欲しいという要望に応えてより本格的なレーサーマシンとして2021年に「WOOF」の発売を開始。「44キッズクロス」という全日本モトクロス選手権現役IA1ライダー小島庸平氏がプロデュースするキッズレースでは、WOOFを含む電動キッズバイククラスMOTO-Eクラスが設けられ、キッズライダーたちが競い合っています。

丹羽群青くん

まだまだ電動キッズバイクに乗るライダーは少ないうえ、エンジンバイクとアクセラレーションの感覚が違うこともあり、乗り方を教わる機会はなかなかないのが現状です。今回は、講師にキッズライダーの丹羽 群青(にわ ぐんせい)くんを迎えて、WOOFのライディングテクニックを教わっていきたいと思います。

バイクを降りたらルービックキューブに夢中

群青くんは現在10歳。ヨツバモトMeowから乗り始め、成長に合わせてWOOFに乗り換えてきた、ヨツバモトキッズです。WOOFを乗りこなすテクニックはピカイチで、44キッズクロスのMOTO-Eクラスで2年連続チャンピオンを獲得。ぶっちぎりの速さとテクニックで、他のライダーからもその実力が認められています。

ライディングテクニックとして教わるのは、乗車姿勢/ジャンプ/コーナリング/ブレーキングの4つ。WOOFが自転車に似たマシン構造ということと、群青くんがBMXバイクに乗っていることが重なり、BMXのテクニックが生かされています。初心者向けというよりは、中級者以上向けになりますが、基礎に忠実で丁寧にマシンを操る群青くんから学ぶことは多く、さらに成長するヒントが見つかるはずです。

BMXバイクはヨツバサイクル(20インチ/ラムネブルー)。本来であれば低学年向きのサイズの自転車ですが、MXハンドルバーというオプションを付けることによって、BMXぽいサイズ感の自転車にアレンジ。パークで楽しむのに最適な道具に変身させています。(※正確にはヨツバサイクルはBMXではありませんが、本稿ではBMXとします)

BMXのスキルも高い。サスペンションがついていないヨツバサイクルを軽快に乗りこなす

トリックもお手のもの

基本姿勢は肘を閉じる

WOOFの基本姿勢で特徴的なのは、肘の開き方です。エンジンバイクの場合は、地面の衝撃をサスペンションで吸収するためにドアノブを握るように外からグリップを握り、肘を開いた姿勢が一般的です。一方、WOOFを操る群青くんのライディングはBMXの乗り方が元になっています。BMXバイクにはスロットルがなく、手首のバネを使って乗るため脇を締め、肘を下げたフォームが一般的。WOOFはサスペンションとアクセルがついているものの、乗り方としてはBMXと同じように身体を使ってセクションをこなしていくため、肘を閉じた姿勢が乗りやすいといいます。なお、BMXと違ってスロットル操作があるため、無理に締めすぎる必要はありません。

また、今回同席したヨツバモト開発者の伊藤さんは、WOOFの乗り方について「サスペンションがしょぼいので、スタンディングで乗って、身体で衝撃を吸収するのが良いと思います。また、MeowはWOOFよりも対象年齢が低いことからサスペンションがついていないのですが、ついていない分、サスペンションの代わりとして必然的にボディアクションで衝撃を吸収することが増えるため、身体の使い方を覚えることができます。群青くんはまさにそうで、Meowから乗り始めて、サスペンションのないマシンでの身体の使いかたを身につけています。衝撃吸収が全くないマシンでコースを走っていたので、路面のガタガタした荒れは全て身体で吸収だ! という育ち方をしていますので、特殊かもしれないです。エンジンバイクの場合、50ccマシンを乗り始めたとしてもどっかり座ってアクセルを開けるという感じなので、そこは乗り方の大きな違いがあります」と語ります。

また、群青くんに特に気をつけていることを聞くと、「頭を固定することで身体の軸がブレなくなるから、とにかく頭を動かさないことを意識してる。視点は姿勢によって変わるけど、目線は常に真っ直ぐを見ることで頭の位置も固定される」とのこと。地面を見るのではなくストレートは道の先を、コーナー侵入時はコーナーの出口を見ることで常に目線を真っ直ぐに保てるでしょう。

BMXのテクニックを生かした、スピードを落とさないテクニック

これまでの話を総合すると、ヨツバモトのライディングテクニックはBMXと共通している部分が多く、そのテクニックがMeow/WOOFのライディングに生かされていることがわかります。また、群青くんが一貫して話していたのは、「スピードを落とさない」ということ。なぜこれが重要なのか、どうやってスピードを落とさないようにしているのか、この点を軸に学んでいきます。

ジャンプは「ゲシらない」

群青くんいわく、ジャンプでは「ゲシらない(編集部注釈:ゲシる=ジャンプを飛びきれず、着地でタイヤが引っかかること)ように走ることを意識してる」とのこと。

ゲシらないことを一番に考える理由は、失速の原因になるから。エンジンバイクであれば、失速したらアクセルを開けることでスピードを取り戻せますが、WOOFはエンジンバイクに比べてパワーが低いため、アクセルを開けて満足いく加速ができるとは限りません。そのため、ジャンプにタイヤが引っかかって失速すると、その後の加速に大きな支障が出て、全体的なタイムロスに繋がります。

パンプトラックにて。ジャンプ前にプッシュしているのがわかる

では、ゲシらないためには、またゲシった時にはどうすれば良いのか。群青くんは「ジャンプはバネで飛んで、無理な時はリアで飛ぶ」と言います。「バネで飛ぶ」というのは、アクセルだけで飛ぼうとするのではなく、荷重と抜重でサスペンションを使うという意味。これにはBMXのプッシュ(パンピング)のテクニックが生かされています。

プッシュとは、ジャンプの飛び出しや着地で重心移動を使って加速を付けるテクニックのことです。BMXでは凹凸のコブが連続した波状コース(通称:パンプトラック)があり、凹凸を走行する時に荷重を使ってスピードを乗せて前進していきます。

群青くんは「BMXでジャンプする時は、ジャンプの飛び出しでハンドルの斜め前らへんに向けて押すイメージで体重をかけてプッシュして、自転車を進ませてる。WOOFはモーターの力で進むから十分にスピードが乗っているときが多いけど、コーナーでミスをしたりしてスピードが足りなくてジャンプが飛べないなと思った時は体重をかけてサスペンションを沈ませることでジャンプを飛び切れるよう調整してる」と、プッシュを駆使してスピードを乗せているといいます。

フロントを浮かして着地するシーン。群青くん「フロントが当たってタイムロスするくらいなら上げて少しでもロスしないようにする」とのこと

では「無理な時はリアで飛ぶ」とはどういう意味でしょうか。これは、スピードが出ていても飛距離が足りずゲシりそうな時に、先に地面にリアタイヤが着くようにフロントタイヤを上げて着地するテクニックのこと。

「例えばフープスだと、スピードがあればコブの上を走っていけるからフロントを上げる必要はないけど、スピードがない時は前後のタイヤがコブに当たってタイムロスしちゃうから、フロントタイヤを上げて、リヤタイヤだけでコブを舐める方が速い。ジャンプは、着地後の下りで体重をかけてサスペンションを縮めることでスピードを上げることができるから、そこでスピードを乗せられるようにしてる。最初は普通に着地してアクセルを開けていたけど、BMXのパンプトラックを走るようになってからプッシュのテクニックが身について、WOOFにも応用してみたらうまくいった」とのこと。

群青くんがMeowに乗り始めた頃からその走りを見てきている、ヨツバモト開発者伊藤さんは「群青くんはエンジンパワーだけじゃ走れないコースもボディアクションでスピードを殺さず走れるんですよ。実際に、BMXに乗った時もすぐにパンプトラックを乗りこなせていて、周りのライダーも驚くほどでした。これはヨツバモトでボディアクションを身につけていたからだと思います」とヨツバモトとBMXの相互作用があると話します。このように、BMXのテクニックを生かすことで、走りの選択肢が増え、ライバルと差をつけることができます。

コーナーは体重移動でスリップを防ぐ

コーナリング時はジャンプのようにコブの起伏でスピードを乗せるということができないため、失速した時に大きくタイムロスをしてしまいます。特に、マシンを傾けすぎたり、アクセルを急に開けたりすることでリヤタイヤが滑った時に失速に繋がります。では、どのようにスリップを防げば良いのでしょうか?

コーナリング時は、リヤタイヤが滑らないようにお尻の位置を後ろにズラし、リヤ荷重にします。マシンの傾きは、路面状況やコーナーの角度を見て、マシンをどこまで傾けたら滑るのか試しながら走ることで感覚を掴んでいきます。

また、アクセルワークは”丁寧に”開けることを意識しましょう。コーナーの真ん中くらいからちょっとずつアクセルを開けていき、滑ったと思ったらアクセルを少し閉じる、というように調節しながら走ることで、滑らずスピードを乗せることができるアクセルワークが身につきます。伊藤さんによるとWOOFは速度域が低いため、アクセルを乱暴にガバッと開けてもマシンが暴れる心配はないとのこと。ただ、丁寧なアクセルワークはエンジンバイクでも必要になるテクニックです。エンジンバイクでアクセルを乱暴に開けるとフロントが浮いたり、リヤタイヤが滑る原因になるため、WOOFに乗る時も意識して心がけることでエンジンバイクに乗り換えた後も安心です。

また、失速せずスムーズにコーナリングを行うためには、コーナーに入る前の意識とライン取りも関わってきます。

「意識は常に次のセクションに向いてる。ジャンプの後にコーナーがあるとすると、早い時はジャンプを飛んでいる時に足を出してコーナーの進入に合わせてマシンをひねったりしてる。ラインも色々考えていて、1人で走ってる時は好きなラインを通れるけど、前に走っている人がいると、その人をアウト側から抜かすのか、イン側を刺して抜くのかを考えて、一番速く抜けるラインを選んでる。選び方としては、コーナーのアウトラインをまず見て、その大きさを確認する。アウトラインがタイトだったらインもタイトってことだから、インの方が早く行けると思ってインを選ぶことが多い」(群青くん)

群青くんのように先を意識して走ることで、その後のセクションもスピードに乗り、全体的なスムーズさに繋がります。

減速しすぎないための繊細なブレーキング

ブレーキングは減速をするためにするわけですが、そこでスピードを落としすぎてしまうとタイムロスに繋がってしまいます。特にフロントブレーキは、かけるタイミングを間違えたり、強くかけすぎてしまうとフロントタイヤが滑って失速する可能性が大きいです。

そこで意識したいのは、ハンドルを切る角度とブレーキを握る強さです。例えば、コーナーを曲がるためにハンドルを切った状態でブレーキをかけるとマシンが滑りやすくなります。さらに、いきなりブレーキを強く握ると、マシンが急停止してバランスを崩す原因にもなります。これらによる失速をなくすため、群青くんはブレーキングをかなり練習したと言います。

「マシンを真っ直ぐにした状態でブレーキングするのが一番安定するけど、コーナー前とかハンドルを切った状態でフロントブレーキをかけたい時もある。そこでなるべく失速しないように、ハンドルを切った角度とブレーキを握る強さを色々試して研究してる。これまで試してきて、大体ハンドルを半分くらい切ってブレーキをかけると滑っちゃうから、半分以上ハンドルを切らないようにしてる」(群青くん)

周回を重ねる中でハンドルを切る角度とブレーキをかける強さのバランスを研究することで、ブレーキングの感覚を掴むことができます。コースにオーバルや八の字がある場合は、まずそこでコーナリングを練習すると良いでしょう。

WOOFのライディングテクニックを学び、冒頭で話した「スピードを落とさない」というポイントが、WOOFの弱みとなるパワーを補い最大限の速さを引き出すために必要だということがわかったと思います。ぜひ今回のライテクを参考に、基本姿勢/ジャンプ/コーナリング/ブレーキングの各テクニックを磨いてみてください。

  • この記事を書いた人

アニマルハウス

世界でも稀な「オフロードバイクで生きていく」会社アニマルハウス。林道ツーリング、モトクロス、エンデューロ、ラリー、みんな大好物です。

-キッズ・ファミリー, ヨツバモト, レース