Deep dive into Dirtfreak バイク パーツ

ロードバイクのハンドガードに新しい潮流を起こすソニックハンドガード ~Deep dive into Dirtfreak Vol.1~

2022年6月にダートフリークが発売を開始した、ソニックハンドガードという製品をご存知だろうか。オフロードバイクのアフターパーツ開発を主軸とし、世界中でダートバイク・ダートスポーツの楽しさを広めるべく精力的に活動する企業が開発した、ロードバイク向けの新商品である。このソニックハンドガード、ダートフリークの製品としては少し毛色の違う、異色の製品である。ダートフリークをよく知るユーザーからすると、「おや?」と感じるような製品かもしれない。ソニックハンドガード、この製品は一体どのようにして誕生したのだろうか。どんな人が、どんな想いで作り上げた製品なのだろうか。

そんな疑問に答えを出すべく、この製品について、ダートフリークの開発現場にDeep dive(深掘り)して、裏側を覗いてみよう。

ダートフリークには、パーツの開発を主な業務とする「開発グループ」があり、現在所属するのは10名程の精鋭たちである。ソニックハンドガードを開発したのは、その中の一人でグループサブリーダーのYさんである。ソニックハンドガード開発の裏側を、Yさんに聞いてみる。

 

ヒット商品を次々と生み出す開発グループの実力者

まず、Yさんとはどんな人物なのか。取材について表向きは「言葉にして伝えるのは苦手」と渋い顔をするものの、いざ話を聞いてみると、なかなか饒舌に語ってくれる。

ichi
軽く自己紹介として、社歴とこれまでにダートフリークで開発してきた代表的な製品は何か教えてください。

ダートフリークに入社して18年くらいです。元々もの作りやCADが好きでそういう仕事をしていて、友人の紹介で縁あってこの会社に入社しました。自分が設計した製品は、ZETAのハンドルバーだったり、シフトペダルブレーキペダルとか、アーマーハンドガードのアドベンチャーシリーズ、 あとはアドベンチャーウインドシールド、代表といえばその辺です。

 

ichi
ダートフリークでも人気の製品ですね。一番思い入れのある製品はどれでしょう?

思い入れというか、苦労したのがハンドルバーですかね。多くのユーザーに支持してもらえるようになるまでは結構大変でした。設計に関してはそんなに苦労は無かったのですが、材質ありきの製品なので、材料探しに時間がかかりました。あと、海外の工場でものづくりをする上での、コミュニケーションの面での苦労はありました。

 

ichi
材料探しに工場とのコミュニケーション、困難を乗り越えて現在のハンドルバーがあるのですね。Yさん個人的には、これまでどんなバイクに乗ってこられてきたのですか?どんなふうにバイクに乗るのが好きなのでしょうか?

若いころからバイクが好きで、高校の時からずっと乗っていたんです。モンキーがすごく好きで、親に借金して買うほど好きだったんですけど、事故をきっかけにやめてしまいました。バイクは好きだけれど、違う趣味に没頭して。それから、ダートフリークに入社して、ミニモトのCRF50で遊び始めて、それからMXレーサー、いわゆるコンペティションバイクに乗るようになりました。スズキのRM-Z 250 ’04、’07、’10を2台。毎週のようにモトクロスコースに行って遊んでましたが、最近はあまり乗れていませんね。結婚して娘が産まれて、他の趣味も忙しくなって。実は自分、ツーリングとかには興味がなくて、バイクはスポーツとして乗るのが好きなんです。今でも乗りたいんですけど、今は娘が一緒に遊んでくれるのでそれが優先ですね。


ichi
同じ車種に計4台乗ってるんですね。スズキのRM-Z250、他の車種に乗り換えようと思った事はないんですか?

同僚からRM-Z 250 ’04を売ってもらって。そこから、’07っていう新型が出た時に、結構デザインが良くて好きで、次の’10のデザインも好きで、スズキ一筋でしたね。

 

ヒット商品生み出す、仕事へのこだわり

ichi
Yさんの仕事に対する姿勢を教えてください。製品開発に対するこだわりはどんなことですか?

どんな製品でも求められている本質を忘れないことです。本来なら性能を優先すべきところデザインを優先してしまったりと、本質からずれることがたまにある。常に忘れないようにしないと、求められているものからどんどんずれていくので。これまで製品開発をしきて、もちろん沢山失敗も経験してきたんですが、その商品にユーザーが何を求めているかっていう本質を誰よりも汲み取っている自信はあります。これはバイクに乗っている乗っていないは関係なく、バイクが好きで設計という仕事が好きだからだと思います。「お、そう来たか」と思ってもらえる製品を世に出せるように、楽しくやってますよ。

 

ichi
意外だな、と思われる製品を開発することにこだわっていますか?

こだわっている、というか「そう来たか」って、思ってもらうことを意識してやらないと仕事は楽しくない。デザイン面でも機能面でも、競合に勝つには、値段だったり性能デザインが重要になる。やれる範囲でユーザーの想像以上のものを「そう来たか」という感じで世に送り出したいですね。それから、深く悩まず楽しくやることが大事ですね。

 

ソニックハンドガード、誕生までの道のり


ichi
ソニックハンドガード、開発者本人から、どういった製品なのか説明していただけますか?

ZETAアーマーハンドガードなどのモトクロスハンドガードっていうのは、既に認知度があって、多くのユーザーに支持していただいていますが、まだまだストリートバイクには認知度が低いので、そういうバイクにも認知度をあげて、つけてもらいたいっていう気持ちから作りました。可能な限り、色んなバイクに取付けられて、防風効果も持ちつつ「かっこいい」と思われるハンドガードです。いろんな部分で調整ができるのと、いろんなコーディネートができる。 ポリカーボネートのハンドガードが基本となっているんですが、ZETAのいろんな種類のプロテクターを選んでつけられるので、全てのバイクに似合うような、コーディネートのできるハンドガードになっています。 

 

ichi
そういう人たちにも受け入れられるようなハンドガードであるポイントって、どんなとこですか?

出しゃばり過ぎないデザインじゃないですかね。要するにやりすぎると、物自体はかっこいいんだけど、車両につけてみたらかっこ悪い事もある。バイクにつけて、全体がかっこいいっていう風にしたつもりですね。出しゃばり過ぎると、ハンドガードが目立ってしまう。かといって、シンプルすぎると、かっこいいなって思われない。バイクとハンドガードのバランスを重視しました。

 

ichi
バイクに乗ってる方っていうのは、そのバイクのデザインや雰囲気が好きで乗っていると思います。それとバランスよく調和するようにデザインするのはすごく難しいように感じるのですが、実際はどのようにやられたのですか?

ハンドガードの市場調査はもちろん、色んなバイクのデザインも調査しました。鋭利なバイクもあれば、GB350みたいなちょっと丸みを帯びたデザインの車両や、ストリートファイター系と呼ばれる車両など、そういうのを見て、全体を見てデザインしました。ここをこうしたら、このバイクにもあのバイクにも合うとかを考えたり。それから、かっこ悪いものを結構調べました。自分がかっこ悪いと思うハンドガードをかき集めて調べるんです。かっこいいものを調べるんじゃなくて。そうすると、「かっこ悪いもの」じゃなくなるんで。そういう手法をとりましたね。

ichi
流通している、かっこ悪いと思うようなハンドガードを、反面教師みたいにしたという事ですね。

変なやり方ですけどね。かっこいいもの見ると、自分の好きなものとかになって、片寄っちゃうんですよ。かっこいいものを見ると意識的にデザインを入れてしまう事もある。いつものやり方とはちょっと違うんですが。安物みたいだな、かっこ悪いな、似合わないなとかたくさん調べましたね。

 

ichi
面白いやり方ですね。既存のダートフリークのハンドガード・世に流通してるハンドガードと、 ソニックハンドガードの違いを、見た目の違い、機能の違い、取付け方の違いについて教えてください。

見た目については、先ほどの話と被るんですが、とにかくいろんなバイクに合うようなデザインです。ロードバイクのハンドカードは、 取付ける需要がなくて、進化もなかった。オフロード以外のハンドガードってただの風よけで、昔からかっこいいものがなかったんです。そういう意味で、見た目については、透明なポリカーボネートを使ったプロテクターでもかっこいいデザインだ、というところでしょうか。

機能については、防風効果はもちろんですが、いろんなプロテクターが付けられて、いろんなところの角度が変えられる。 正面の角度変更できる仕様は意匠登録をしています。

ここって、ちょっと角度を変えるだけで、 吊り目だったり垂れ目だったり、バイクの見た目の印象が大きく変わる。そういう細かい動きと、カスタムコーディネートするにあたっての遊びがある。例えば、透明のポリカーボネートに飽きてしまったら、色んなカラーのあるZETAのアーマーハンドガード用プロテクターを選んで付けたりできる。実はいろんな楽しみ方ができます。

取付け方については、ZETAアーマーハンドガードって、 ハンドルバーエンド以外に取付ける箇所があるじゃないですか。それが結構取り付ける皆さんにハードルが高かったり、適合がとれるかどうかはじっくり試さないと分からない。今回はハンドルバーエンドだけで保持してるので、取付けが簡単なのがポイントですね。バーエンドだけで保持してるガードなので、取付けられるバイクの幅が一気に広がります。

ichi
バーエンドだけで取付ける設計にしようと考えたのは開発のどの段階ですか?

割と早い段階です。ロードバイクに乗っているお客様からメールで「この車両にこのハンドガードをつけつけれますか」っていう質問がよく来るんです。 実際には付けたことがないので答えられなくて、もどかしい思いをしていました。今回のハンドカードは、ハンドルバーのエンドだけ調べれば取付けできる設計にしました。質問が多かったり、どうしても付けたいっていう人が多かったので、そういう人たちのための製品があったらいいんじゃないかって思ったんですよね。

ichi
実際の開発に際して苦労したのはどんな点ですか?

デザインに関しては、1つのデザインにしかできないので悩みました。誰にでもかっこいいって思ってもらう事って、本当に難しいですよね。1つしか出せないデザインに苦労するのは、毎回どの製品でも同じです。でも楽しんでやっていますよ。

 

ichi
見た目のデザインですか?機能のデザインですか?

機能っていうのは、ポンポンって出てくると面白いんですけど。 やっぱりつけてもらうには第一印象だったり、インパクトだったり、やりすぎてもダメだし、足りないのもダメだから、 難しいのは見た目のデザインですね。

 

ichi
機能やデザインに関して、開発初期では計画してたけど、途中で諦めたみたいな部分はありますか?

機能については諦めたというよりは、たし算が多かった。多くのバイクにつくには、こういう風に動いたらいいとか、この角度が調整できたらいいとか。逆に見た目のデザインは今までとは違って、尖ってない滑らかなデザインにして、色んな種類のバイクに付ける事、色んな角度にしてもらったりするっていう事を意識して、デザインはかなり削ぎ落としましたね。自分的には物足りなさを感じたりもする部分もあるくらい、結構引き算しましたね。

 

開発者から見た、ソニックハンドガードの溢れる魅力

ichi
機能が盛りだくさんで、とても魅力的な商品なんですけども、開発者から見て、 ここはポイントだっていうイチ押し機能はどれですか?

見た目の印象を自由に変えられる点ですね。角度の微調整とさまざまな色の種類のあるZETAのプロテクターシリーズが3種類も付けられる。いろんなバイクで着せ替えてコーディネートしているところをもっと見てみたいですね。たまに、ハンドルバーの形状によって、ハンドガードが下がり目な感じについちゃうパターンがあります。垂れ目になってしまうのを今までのハンドガードでは調整できなかった。そこをやる気のある表情を持った角度にもできるっていうのがいいですよね。残念な部分だったのが残念でなくなる。そういうちょっとした、他社にはない微調整と豊富なプロテクターがつけれるっていうところが一押しです。

 

ichi
このハンドガードはいろんなバイクに似合うんですけども、開発者から考えて、似合う是非つけてほしい車種を教えてください。

ヤマハのMTシリーズ、KTMのDUKEシリーズ、カワサキのZシリーズ、スズキのKATANA。セパハンじゃない、バーハンドルがついてるバイクは付けられるものが多いと思います。これから新しくM6タイプを発売するので、あまりにも特殊なハンドルとハンドルエンドじゃなければ、ソニックハンドガードのどれか必ずつくようになってます。

 

ichi
最後に、この製品を取付けると、バイクライフがどのように変わりますか?

カスタマイズしたという満足度が上がると思いますね。やっぱり1番目立つ部分につける部分なので、車両との一体感がでるので、満足度は高いんじゃないかと思います。常に乗ってて、目につく部分のパーツだし、ハンドルの前に出てくる部分なので、目立つし、 主張できる部分のカスタムパーツだと思うので、その辺りでは、満足度は高くなっていただきたいな。

 

ichi
カスタムの度合いというか、難易度的には簡単な部類ですよね?

簡単だと思います。初めてのカスタムにもおすすめなんですが、車両によっては多少の加工が必要なこともあるので、そこは遠慮なく販売店様などに相談してみてください。

 

新たな潮流はここから

ソニックハンドガードの開発現場にDeep diveしてみると、オフロードバイクへの深い愛を持ってロードバイクの大きな海へとこぎ出す開発者がいた。常にユーザーの期待を超える製品を世に送り出すことにこだわりを持ったものづくり。次はどんな製品で、我々に「お、そう来たか」と思わせてくれるか、これからも目が離せない。

 

  • この記事を書いた人

ICHI

直感に従った結果よく道に迷う。ワインとチーズをこよなく愛する元九州人。

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