モータークリニック ストラーダの渡辺健さんが教えるメンテ連載も、早7回目。今回は、オフロードバイク乗りなら覚えたいタイヤ交換について教えてもらいましょう!! ベーシック編は、ザ・日本のトレールマシンセロー250がクランケです!
渡辺健さん/藤波貴久・小川友幸選手をはじめ、トライアルのトップライダーとの交流も深く、自身もトレールをつかったオフロードバイク遊びを提案したり、ライテク講座を開催してきた、オフロードの伝道師。現在は、バイク修理専門の「モータークリニック ストラーダ」を運営中
簡単なのは、フロントタイヤ。ここから覚えるべし! タイヤをホイールから外す方法
タイヤ交換って、とても奥が深いモノなんです。オフロードの究極の世界といえば、やっぱりオンタイムエンデューロでしょう。上の写真は、全日本エンデューロの競技中。何をやってるかって、タイヤ交換です。エンデューロは、その1913年から続く長い歴史のなかで、機材が進化するなか様々なルールを生み出してきました。そのうちのひとつが、整備はライダー自身がおこなうということ。いつしか、その整備のなかでもっとも見応えのあるものが、タイヤ交換になり、トップライダーのスムーズなタイヤ交換さばきは、観客をあつめるほど。定められた時間で、エアフィルター、自分がこわしたパーツ、などなどを整備するんですが、そのうちの一つがタイヤ交換。特にリアタイヤは1日200〜300kmほど走ってきたあとなので、変えないとタイムに大きく影響してしまいます。タイヤの中には、空気ではなく専用のムースというスポンジが入っていて、交換の方法もチューブとは異なります。いずれライドハックでも、このレースにおけるムースタイヤ交換を紹介しましょう。
ですが、今回は一番簡単なフロント21インチタイヤについて、渡辺さんに教えてもらいます!
セローの場合は、アクスルシャフトは両側からしめつけられているパターン。
車体から外したら、できればタイヤ交換台の上で作業したいですね! まずはエアバルブのナットを緩めます。
UNIT
E1410 ムースチェンジャー
品番 : UN-E1410
カラー : ブラック
価格 : ¥18,700(¥17,000)
素材 : スチール
重量 : 13.5kg
※今回は、ムースチェンジャーを使っていますが、同じくUNITのタイヤチェンジャースタンダードを最初はおすすめします。ムースチェンジャーは、タイヤ交換台としてもつかえますが、通常は不要です!
バルブ回しで、チューブのバルブを抜き取ります。これで、チューブ内の空気は完全に抜けますよ。バルブを抜かずに、空気を若干残しておいても可ですね。
そしてビードを落とします。フロントタイヤの場合、手でタイヤの側面を押すだけでビードが落ちます。タイヤ交換ビギナーさんは、ここで何を言ってるのかわからなくなることが多いですよね?
なので、タイヤを輪切りにしてみました! ビードを落とすと…
こうなるわけです。リムの高い部分に触れていたビードが、リムの深いところに落ちます。この落差があるから、タイヤが片方に偏り、タイヤを脱着できるようになるわけなんです。リムとビードが密着しているので、これを「剥がす」という表現の方が合っているかもしれませんね。とにかく、タイヤ交換のキモはこの「ビードを落とす」ことにあります。はい、ここテストに出ますよ〜。
ビードを表裏全周おとしたら、タイヤレバーでビードをめくっていきます。エアバルブの逆側からはじめるのがセオリーですね。
どんどんめくれます。めくれづらい場合、タイヤとリムが乾いていて、摩擦が強すぎることがあります。そういう場合はビードとリムの間に、シリコンスプレーしてあげると、グーです。
全周とれたらバルブの部分を持ち上げて抜きます。
チューブをタイヤから外します。引き抜くだけですね。
ホイールをタイヤから外す方法はたくさんあるのですが、今回はタイヤの中にリムを「落とす」方法で進めてみましょう。外れた方とは逆のビードを、同じようにめくっていきます。
めくれたら、このようにタイヤの中にホイールが落ちるわけですね。
あとは、ぐいっとホイールを引き抜いてやります。
ここでやっておいてほしいのが、リムバンドのチェック。これがダメになってると、指さしているニップルにチューブが触れてしまい、パンクの元になってしまうのです。ここは、ガムテープやビニールテープでも代用可能です。
新品タイヤを装着する
次は、新品タイヤの装着です! ビードクリームをビードに塗っておくのをわすれないようにしましょう〜。片側のビードをひっかけるようにして…
DRC
ビードクリーム
品番: D51-50-120
内容量: 40g
価格: ¥605(¥550)
がぽっと力を入れることで、ハマります。これは、比較的柔らかいトレールタイヤのなせる技です。レーサーのタイヤ交換は、もう少し手順が複雑ですね。
チューブのエアバルブを、位置をあわせながらタイヤに仕込みます。
バルブを、穴に通します。ここは、細いフロントタイヤだとなかなか入らず苦労するところ。
コツはチューブの持ち方です。中指でバルブを押し込めるように、タイヤの中で持つようにしましょう。
この段階で、チューブに空気を少しいれておき、チューブが撚れていない形をつくっておくとベター。理由は後述します!
そして逆側のビードをめくりいれていきます。ビードが上がってこないように、ヒザなどでおさえながら進めていきます。
ビードを抑えておく工具も、ラインナップされていますよ!
UNIT
P2604 ビードホルダー
品番 : UN-P2604
価格 : ¥1,430(¥1,300)
サイズ : 奥行 210 × 幅 28 × 高さ 35 (mm)
重量 : 186g
ここで気をつけたいのは、タイヤレバーでチューブに穴をあけてしまわないこと。タイヤの中でチューブがこういう形になっていると、タイヤレバーでチューブを噛み込み穴があいてしまいます。できれば、90度以上レバーを押し込まないようにすることが大事です。さきほど書いたとおり、チューブに空気が少し入っていると、形がでているので噛み込みづらいのです。
こういう形でチューブを避けていればOKなのですが…
こうして、チューブの状態を確認してあげるのも、ありですね。
コツは、ちょっとずつ進むこと。一気にやろうとすると、力が必要になるので、チューブを噛みやすくなります。
エアバルブの周辺を最後にもってこないようにすすめましょう。で、ここまできたら…
手や足で押し込みましょう。何度も言ってるとおり、とにかくレバーでチューブに穴を開けたくないわけです。そのために有効なのは「レバーをできるだけ使わない」ということ。プラスチックハンマーで、無理矢理おしこんでもOKです。
エアを充填していきます。このエアで、ビードをリムに嵌めるため、規定よりも多めにいれましょう。ビードが嵌まったら、規定の空気圧まで落とします。
カラーを左右わすれず嵌めて…
アクスルを通します。
アクスルボルトを締める前に、フロントサスを上下させておきます。こうすることで、ホイールとアクスルの位置が正しく決まるのです。
アクスルには、緩みチェックマーキングをわすれずに!