ひとえにモトクロスウエアと呼ばれますが、その用途はモトクロスに限らないですよね。昨今では、トライアルでもワンピースのウエアではなく、モトクロスウエアを着用するプロダライダーが増えました。林道を愉しむツーリングライダーも、モトクロスウエアを着て走りますし、エンデューロでも、もちろん人気です。で、出たばかりのFOX2022モデルを見て見ると…。
左から、フレックスエアー/360/180というシリーズです。一体どういう選び方をすればいいんでしょうか!!!
時代が変わったのは、フレックスエアーの登場から
レーザーレーサー、という水着を知っていますか? 北京オリンピックで実に四分の三の選手が着用したとされる水着で、明らかにそれまでの水着よりもタイムが出ると話題になりました。スポーツウエアの世界は、日進月歩でハイテクノロジーを駆使し、進化しています。最近ではナイキのマラソンシューズが話題になっていましたね。ハイテクノロジーが、リザルトを後押しする時代が、この10年続いているのです。
FOXフレックスエアーは、このハイテクノロジーなスポーツウエアの文脈から考えるとわかりやすいかもしれません。上の写真をみてもらうと、とてもわかりやすいですね。フレックスエアー以前のモトクロスパンツは堅牢さが至上の命題でした。この前面パネルに至っては、とにかく破れづらく、皮膚をまもってくれる、ロードバイクのつなーぎに通じる考え方です。が、このフレックスエアは違います。伸縮性があって、非常に薄い。2021年モデルまでは、コーデュラ(高強度な新素材。アウトドアアパレルでも非常に人気)を使っていましたが、それすら2022モデルでは排除して伸縮性を確保。つまり、めちゃくちゃ動きやすいのです。そう、フレックスエアーはスポーツウエアとして革新的に「うごきやすさ」を追い求めたのです。いいづらいことではあるのですが、FOXの他のラインナップである360などと比べると、薄くて破れやすい。目的のために、尖った性質を持ったウエアだと言えますね。
丈夫な部分は、ヒザの裏がわだけといっても過言ではありません。ここは、レザーが入っていて、バイクとの擦れ破れを防ぐだけでなく、グリップ感も良好。
すべてLサイズを着用していますが、みてのとおり作りもタイトに仕上がっています。特に袖のバタつきがおさえられていて、風ではためいたりしない作りなのです。
ところどころに配置されたメッシュパネルも、すさまじい透け具合。走ればわかる、空気導入の効率の良さ。
袖口は、リブがありません。極力、バイクなどにひっかかりづらく、出っ張った部分を排除したつくり。縫い目もほとんどなく、シームレスな製法です。リブがなくともストレッチする素材なので、腕が風で出てしまうなんてこともありません。
依然としてハイエンドの360
FOXのラインナップは、180と360の2タイプが基本でした。その2ラインナップは今でも継続されていて、フレックスエアーが出たいまも360はハイエンドモデルとして君臨しています。ちょっと悩ましいのは、360もフレックスエアーに負けず劣らず運動性能が高く、ストレッチすることです。
袖口は、シームレスではないのですがリブを排除した形。フレックスエアーほどではないにしても、十分に邪魔にならない袖口です。
前面パネルは、パリッとした素材で転倒時などに破けづらく耐久性もヨシ。1シーズン1着、あるいは数年このウエアで済ませよう、というライダーにはもっとも適したモデルと言えるでしょう。
腰ベルトは、2021モデルから左右にしっかりゴムが効いたものに代わりました。ちゃんと腰がとまる印象があります。
メッシュパネルは、フレックスエアーほどではなく控えめ。冬のライディングにも支障ありません。
ジャージの裾が出てしまわないように、パンツにはシリコンが配置。
コストパフォーマンスに優れた180。軽い着心地は、360を凌駕するシーンも
そして、これまではエントリーユーザー向けの立ち位置だった「180」も、年々運動性能が上がっていて、着心地の軽さからいったらむしろNo.1かもしれません。素材自体の軽さが、360を上回っています。何を選べば良いのか、本当に悩ましい!
前面パネルは、見ての通りパリッとした素材でストレッチ感はありませんが、少し太めのパターンを採用することで動きやすさを確保。転倒で破けてしまうようなことも少ないでしょう。
180の特徴とも言える、樹脂パーツ。エアインテークにもなっているし、ヒザまわりの丈夫さを底上げ。
腰ベルトは、旧来のタイプを使っていたり…
袖にも唯一リブを配置していたりと、新しいところはあまりないのですが、堅実なつくりをしています。
メッシュパネルは、360同様。
運動性能をとるのか、耐久性をとるのか。ウエア選びの新基準
3タイプを俯瞰してみえてくるのは、フレックスエアの特殊性です。それまでの「ウエアは丈夫で無ければいけない」という概念自体を打ち崩したコンセプトですよね。お値段を比較してみましょう。
フレックスエアー リエトジャージ ¥10,780 パンツ ¥36,850 計 ¥47,630
360 マーズジャージ ¥8,250 パンツ ¥30,800 計 ¥39,050
180 スキュージャージ ¥4,950 パンツ ¥17,600 計 ¥22,550
フレックスエアーと360にはそこまで値段の差がありませんが、耐久性を考えると360のコストパフォーマンスの優秀さが際立ちますね。公道での転倒を考える林道ツーリングでは、360を選ぶのがいいかもしれません。でも、そうそうモモをすりむくなんてこともないでしょうし、レイヤードをしやすいタイトなフレックスエアーもナシではないでしょう。JNCCやWEXで良く転ぶから、というライダーなら360か180を選んだほうが無難ですが、ぶっちゃけお金に余裕があるなら、運動性能がいいに越したことはありません。1レース1着になってもいい、って勢いでフレックスエアーを選んじゃっても全然問題無いでしょう。