様々なダートフリーク製品を使用して1000km走行し、耐久テストやリアルな使用感をお届けする「1000km実走テスト」連載がスタート! 第一回目となる今回は冬のツーリングにマストなハンドウォーマーをインプレッション。
メディアのインプレッション記事のほとんどはパーツやアイテムを装着して簡単に走行テストを行うだけ……。しかし、実際にアイテムを購入したユーザーはそれを使って何百kmも走行します。この「1000km実走テスト」企画では、実際にダートフリークの商品を使って約1000km走行し、その効果を検証してみたいと思います。
vol.1となる今回検証するアイテムはZETAのCW ハンドウォーマー。RIDE-HACK的には冬にバイクに乗るのがおっくうになる理由のナンバーワンは圧倒的に手の寒さなんです。バイクに乗りたての頃、ハンドウォーマーを購入して装着したことがありましたが、密閉性が甘く、隙間風が入ってきて思ったほど暖かくないし、何よりウインカーなどスイッチ類に干渉してしまって操作しづらく危険だったので、数回使って外してしまったことがあります。
それ以来、ハンドウォーマー自体にあまり良い印象がなかったのですが、今回のCW ハンドウォーマーは発売時にテストした際、保温性と操作性が非常に高く、とても好感触だったのを覚えていたので題材として採用しました。そのテスト時も冬でしたが昼間に下道で1時間ほど使用しただけでしたので、今回は早朝から深夜まで、高速道路も含めてがっつり走ってみました。
グリップヒーターの有無、2つのMXグローブで比較テスト
装着した車両はトライアンフのTIGER1200 GT PRO。
今回走ったのは他の取材を兼ねて東京→下田→鈴鹿→東京。このルートで往復約915km。ちょっとだけ足りませんが、「900kmテスト」では中途半端感がすごいので、これで「1000kmテスト」ということで一つお願いします。取材日は12月にしては比較的暖かい日で、日中の最高気温は12℃の予報。それでも朝6時にエンジンをかけた時はモニターが「2℃」を表示していました。
さて、昨今のアドベンチャーモデルの多くには、グリップヒーターが標準装備されています。とはいえ、TENERE700やV-STROM800DEなど、グリップヒーターが標準装備されていない(オプションではラインナップあり)アドベンチャーモデルもあるため、今回は往路と復路でどちらもテストしてみました。グリップヒーターを使用するかどうかでハンドウォーマーの使用感は大きく変わってくるんです。
まず往路ではグリップヒーターを使わずに、DFGから新しくリリースされたウインターライドグローブを着用しました。スタートした直後の早朝はさすがに寒かったのですが、暖かいガレージからスタートしたばかりなので、手がかじかむほどではありませんでした。さらに首都高に乗ってから東名高速道路にアクセスするまでは30分ほど山手トンネルの中を走ることになるため、ここで早朝の一番厳しい寒さをだいぶ凌ぐことができました。
これまでの経験上、いくらすぐにトンネルに入るとはいえ、12月の早朝にハンドウォーマーなしで厚手の冬用グローブだけだったらかなり寒い思いをしていたと思います。トンネルを抜けた頃には時間も朝7時を回り、日の光を浴びると少しずつ身体も暖かくなってきて、モニターを見ると気温は7℃まで上がっていました。この時の手は「ちょっと寒いかな」という感覚。ハンドウォーマー未使用の関東の10月と同じくらいだと思います。下田に到着する頃には11時を過ぎていて気温は12℃くらい。むしろ少し暖かいくらいでかなり快適。
別件の取材を終えて下田を出発する頃には16時を過ぎていて、風も出てきてちょっと寒くなってきました。とはいえ、バイクに乗っていれば風は常に当たるものですし、21時に名古屋に着くまで気温は10℃前後あって、よくある冬のツーリングで手がかじかんでレバー操作が疎かになってしまうようなことはなく、目的地に着くことができました。
DFG
ウィンターライドグローブ
¥4,620(税込)
カラー:ブラック/グレー、ブラック/カモ
サイズ:S、M、L、XL、XXL
21時に名古屋を出発し、約4時間かけて東京へ帰ります。復路ではいよいよグリップヒーターを解禁。そのためグローブは冬用のウィンターライドグローブではなく、普通のMXグローブであるDFG ソリッドグローブをチョイスしました。
出発の21時の気温は9℃、グリップヒーターは「OFF、1、2、3」と4段階から強さを選ぶことができましたので、まずOFFからテスト。スタートしてすぐ、下道をゆっくり走っているうちは我慢できたのですが、高速道路に乗ったら絶対に寒くてヤバい、と思ったのでICの入り口でレベル「1」に。するとハンドウォーマーの中はほぼコタツ状態になり、はっきり言ってかなり暖かくなりました。深夜の23時を過ぎて、富士山の近くを走っていると気温が4℃まで下がり、ちょっと手が冷たくなってきたのでレベル「2」に変更。するともう全然余裕でした。一度試しにレベル「3」も使ってみましたが、逆に暑過ぎてグリップが握れなくなってしまったので、すぐに「2」に戻しました。冬の北海道とか氷点下以下のところを走る時にこそ、レベル「3」の出番だと思います。
グリップヒーターは冬のツーリングにとってとてもありがたい機能ですが、薄手のMXグローブで長時間使用し続けたら手の表面が熱で痺れてしまいました。なので結論としてはグリップヒーター使用時でもウィンターライドグローブを使い、暖かい日中はなるべくグリップヒーターに頼らずに走行するのが、快適に走り続けられるコツだと思いました。
DFG
ソリッド グローブ
¥4,400(税込)
カラー:ブラック/グレー、ブラック/ブラック、レッド、ネイビー、ブラックカモ
サイズ:S、M、L、XL、XXL
また、オプション装備であるシートヒーターも付いていたので、こちらも併用しました。シートヒーターは「OFF、1、2」からレベルを選択できましたので、常にレベル「2」で使用しました。
DFG
ウィンターライドジャケット オフロード
¥25,300(税込)
カラー:ブラック
サイズ:S、M、L、XL、2XL、3XL
DFG
ウィンターライドパンツ トレール
¥22,000(税込)
カラー:ブラック
サイズ:28、30、32、34、36、38、40
いくら手とお尻が暖かくても足や上半身が寒ければ走り続けることはできません。ライディングギアはDFGのウィンターライドジャケットとウィンターライドパンツで完璧。中には上下インナーとダウンベストを着込みました。
昼間は高速道路を走っていても驚くほど快適でした。シールドを一番高くすると防風性能が優れているため、上半身にもほとんど走行風が当たらず、身体はほぼ寒くありません。
早朝や深夜は普通なら寒くて手もかじかんでしまうため、サービスエリアに寄って休憩したくなるところなのですが、なんとバイクに乗っていた方が温かかったので、サービスエリアに寄りたくなくてトイレを我慢して走り続けてしまうという、初めての経験に笑ってしまいました。さらにTIGER1200 GT PROにはクルーズコントロールが付いています。おかげで高速道路を走っていてもずっとスロットルを開け続けて右手が疲れてしまうこともなく、CW ハンドウォーマー、グリップヒーター、シートヒーターの合わせ技でいつまでも走っていられそうでした。
スタンディングにも対応した
圧倒的操作感
ここまでCW ハンドウォーマーの暖かさを中心に書いてきましたが、ここまでは正直言って、かなり廉価なものを除いて他のメーカーのハンドウォーマーでも同じ結論が出たと思います。むしろ操作性を犠牲にして暖かさに全振りした、もっと暖かいハンドウォーマーもあるでしょう。
一般的なハンドウォーマーとCW ハンドウォーマーの一番の違いは、オフロードバイクに精通したダートフリークが開発しているからこその、圧倒的な操作感の良さにあります。通常ハンドウォーマーは、シッティングで乗ることしか想定していないオンロードバイクをターゲットに開発されているため、スタンディングすると腕に押されてハンドウォーマーの形が歪んでしまい、手首が露出してしまったり、とても操作しづらくなってしまうものがほとんどです。
その点、CW ハンドウォーマーはスタンディングしても、シッティング時と同様、まるで何もつけていないかのような操作感を実現しています。
シッティング時
スタンディング時
下田では少し林道も走行しましたが、スタンディングで上半身を前傾にさせたり、お尻を引いたりしてみても、全く破綻しない操作感でした。さらに今回感じたのはスロットルやレバーの操作だけでなく、ウインカーやハザード、クルーズコントロール、ライドモードなどのスイッチ操作もかなりやりやすい、ということでした。ただしこちらは最初のセッティングがかなり大事になってきますので、次の項目でしっかりそのコツを解説していきます。
ハンドウォーマーのメリットは温かいことだけで、デメリットとして操作しづらいこと、見た目が悪くなることが挙げられると思います。しかしこのZETA CW ハンドウォーマーでは操作しづらいというデメリットをほぼ100%解消しており、さらに見た目もスタイリッシュでアドベンチャーバイクによく合っています。短距離、長距離に関わらず、冬にバイクに乗るなら必須装備と言えると思いました。
TIGER1200 GT PROとの相性抜群!
スイッチ類の操作も容易
CW ハンドウォーマーにはCRF250Lなど小型のオフロードバイクに対応したMサイズと、CRF1100L AfricaTwinやTENERE700などに対応したLサイズがラインナップされていますが、TIGER1200 GT PROはLサイズがピッタリ。
CW ハンドウォーマーの内側にある2本のベルクロをハンドガードのフレームやプロテクターに固定することができます。ハンドガードが芯の役目を持つことで長時間の使用でもハンドウォーマーの形状が代わりにくく、最初にセットした操作感を維持してくれます。
外側はミラーの付け根をフラップでしっかりと固定。ミラーとクラッチのマスターシリンダーの隙間を通すことができました。
Lサイズはバーエンド側もベルクロで開閉できるため、手首の自由度も確保されています。さらに装着の際にも便利で、様々な車両・ハンドガードに対応できます。汎用性の高さはさすがと言えるでしょう。
最後にスイッチボックス付近を3本のフラップで留めるのですが、ここをキツく締めすぎてしまうと、ハンドウォーマーの生地とスイッチとの間に余裕がなくなり、操作が難しくなってしまいます。
最初は保温性を気にしてキツく装着して走り出してしまったのですが、ウインカーすら操作できなくて、すぐに停まってセッティングし直しました。
この3本のフラップのセッティングがストレスのない操作感を維持するキモでした。装着する車両に合わせてキツすぎず、緩すぎず、実際に手を入れてレバーを握ってみたり、スイッチを操作してみたりして、ちょうど良い締め付けを探ってみましょう。不安な時は少し緩くしてもそこから隙間風が入ってくるようなこともありませんので安心してください。
右手スイッチボックスにはイグニッションボタンの他、ハザードボタン、ホームボタンがあります。
左手スイッチボックスにはウインカー、ヘッドライト、クラクション、ライドモード、クルーズコントロール、グリップヒーター、シートヒーターなど様々なボタンが密集しています。ハンドウォーマーを装着すると、ボタンが見えなくなってしまうため、よく使うボタンの位置を覚えておきましょう。
冬のバイクライフを支えてくれる
マストアイテム
と、いうわけで約1000km走ってみた結果、やはりCW ハンドウォーマーは一般的なハンドウォーマーのデメリットを解決してくれる冬のアドベンチャーツーリングの強い味方だと思いました。
インプレッションには書きませんでしたが、最後に小ネタを一つ。ツーリング途中でちょっとお店に寄り道する時などに、脱いだグローブをハンドウォーマーの中に忍ばせておくと、出発する時にグローブが温かいまま再装着することができ、とても快適でした。
本当に全オフロードバイク乗りに試してもらいたいアイテムです。もうこれなしでは冬はバイクに乗れない体になってしまいました……!