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ここまでやるか、マディ対策。

マディコンディションは路面がぐちゃぐちゃで走りにくく、走れば一瞬で全身泥まみれ……。走行後の洗濯のことまで考えると、走る前から憂鬱な気分になります。できるならマディコンディションを走りたくないですが、レースとなるとそうも言ってられません。そこで、今回はマディ時の悩みを解決するためのノウハウやアイテムを使って、マディ対策の効果を検証。憂鬱なマディも、しっかりと対策をすれば快適に走れるはずということで、編集部イナガキ、イイ、イザワが身体を張ってテストしてみました。

マディ対策は下準備が一番大事!

マディ走行時は全身泥まみれになるため、ヘルメット、ウエア、グローブ、ブーツなど各所に対策をする必要があります。そして、走り始めてから「ここも対策しておけばよかった……」と思わないためにも、下準備の段階で妥協しないことが大切です。特に順位を争うレースでは、ここまでやるのかと思うほど細部までマディ対策を行っているライダーも多くいます。ここではマディ対策用の装備を、ノウハウとともにご紹介!

クリアな視界を保つ、最強のゴーグルを作る

ライダーにとって致命的なことは、泥によって視界を奪われることです。特に他のライダーと一緒に走るモトクロスでは、前を走るバイクから飛んでくる泥がレンズにつき、路面状況を確認することができなくなるということが起きます。そこで登場するアイテムが、フィルムです。

フィルムは、ゴーグルレンズに泥がつくのを防ぐアイテムのこと。レンズの上に重ね、泥がついたらフィルムを剥がしていくことで視界をクリアに保ちます。種類としては、フィルムを1枚ずつ剥がしていく「ティアオフ」と、1枚の長いフィルムを巻き取る「ロールオフ」の2つがあります。ティアオフは安くて取り付けが簡単。しかし、フィルムの間に泥が入ってしまったり、1枚ずつ剥がしたいところを複数枚いっぺんに剥がしてしまうというミスが起きやすいため、注意が必要です。一方、ロールオフはリールを引っ張るだけで汚れたフィルムを巻き取ることができます。巻き取り式のためフィルムが剥がれて無くなるという心配もありません。この2つの使用感は大きく異なるため、ライダーによって好みが分かれるところでもあります。

2023全日本モトクロス選手権 IA1 道脇白龍(ティアオフ使用)

ティアオフもロールオフも、外す時にハンドルから片手を離す必要があるため、モトクロスではジャンプを飛んでいる間にティアオフを外すライダーがほとんどです。この光景は、モトクロスのかっこいい走行シーンの1つでもあり、走行中唯一何もしない(できない)ジャンプという瞬間があるからこその特徴かもしれません。また、ティアオフを複数枚外してしまわないように、持ち手を丸めておくという小技もあります。

一方、山の中など自然環境を生かしたコースを走るエンデューロのレースでは、環境保護のため、フィルムを捨てないロールオフの使用が義務付けられています。このように競技の特徴によってマディ対策も大きく変わってくるため、レース参戦時には確認が必要です。

本題に戻りましょう。今回のマディ対策にはロールオフを使用していきます。ゴーグルはイナガキ愛用のSCOTT フューリーゴーグル。ロールオフ専用のものではないため、フィルムを巻き取るキャニスターをセットし、フィルムを左側のキャニスターに取り付ければ完成。キャニスターについているリールを引っ張ることでロールが巻き取られ、一瞬で視界がクリアになります。

レンズはSCOTT アンチスティック ダブル レンズを使用。これは、ロールオフ専用のレンズで、フィルムが張り付かないようレンズ表面にドット加工が施されています。また、レンズは2層になっていて、レンズの間に空気の層が作られることで、外気とゴーグル内の温度差を少なくし、レンズを曇りにくくします。つまり、泥にも曇りにも強い究極のゴーグルというわけです!

泥がついたグリップは、グローブで握りやすくする

モトクロス用のグローブは、基本的にドライコンディションでの耐久性や握り心地を考慮して作られています。そのため、マディコンディションで泥がつくと、グローブ自体が滑りやすくなり、アクセルを思うように開けることができなくなることも……。対策としては、いかにグリップを握りやすくするかという点が重要になってきます。

滑りにくい軍手を使ったり、グリップに割り箸を巻くことで凹凸を作り握りやすくするなど、様々な対策がありますが、今回はDFGのマッドパスグローブでマディ対策をしていきます。同製品は、手の甲に防水性のある生地が、手のひら部分には立体メッシュ生地が採用されており、雨で濡れたり、転倒しても泥が付着しにくくなっています。

テープ派、ラップ派に次ぐ新たな選択肢

ブーツのマディ対策といえば、履き口にテープやラップを巻いて、泥が中に入るのを防ぐというのが定番でしょう。テープは粘着力が高く剥がれにくいですが、隙間から水が入ってくることもしばしば。一方ラップは密着度が高く、水の侵入を防ぎますが、粘着力が低めです。そこで、新たな選択肢としておすすめしたいのがDFGのマッドパスゲイター2.0です。使い方はテープやラップと同様、履き口に巻きつけるスタイル。ベルクロで固定し、内側には滑り止めがついているためライディング中に剥がれる心配はありません。また、ストレッチ性能が高いので密着度も高く、隙間から水が入ってくることも防ぎます。

プルーフジャケットでウエアの泥汚れ問題を防ぐ

ウエアについた泥汚れはなかなかの厄介もの。洗濯をしても汚れを落としきれず、特に白や明るい色のジャージだとシミになってしまうこともあります。それでもお気に入りウエアを着たいという気持ちが勝り、汚れるのを覚悟して着用しているライダーもいるでしょう。「お気に入りのウエアを着たいけど、極力汚したくない!」という葛藤を解決するため、今回はジャージの上にDFGのプルーフジャケット を羽織り、ジャージの泥汚れを防いでいきます。

なお、防水ジャケットは水の侵入を防ぐ代わりに通気性が低く、走行中に蒸れが気になることがあります。しかし、プルーフジャケットは背中にベンチレーションが配置されているため、蒸れを最小限に抑えてくれます。着用することでジャージのデザインが見えにくくなってしまうという点は悩ましいですが、今回はそれよりもいかに汚れをつけないかを重視します!

マディ対策、完成!

マディ対策が完成しました! 見た目は大袈裟にも見えますが、ここまでやってどれほど効果を得ることができるのか、検証していきたいと思います。

いざ、泥だらけに

検証するにあたり、前を走るライダーから飛んでくる泥が必要ということで、編集部のイイにも協力してもらいました。泥が溜まっているところをあえて走り、躊躇なくイナガキに泥をかけてもらいます。

こちらは泥をかけられまくったイナガキ。あれだけ真っ白だったジャケットもこの有様です。途中「何これ……鬼畜すぎる……」という嘆きも聞こえましたが、良い仕上がりになりました!

マディ対策の効果は抜群

泥だらけになったところで、それぞれのマディ対策の効果を見ていきましょう。

視界が全て泥で覆われていたゴーグルレンズですが、ロールオフのリールを引っ張ると一瞬にして視界が開けました。レンズにフィルムがくっつくこともなく、フィルムがスルッと巻き取られ、これならいくら泥がかかってきても怖いものなしです!

今回イナガキが大絶賛していたのがマッドパスグローブ。メッシュ生地のため泥や水がグローブ内に染み込んでくるそうですが、グローブの表面には泥が付着しにくく、グリップ力が保たれていたとのこと。

マッドパスゲーターなしの場合

マッドパスゲーターありの場合

マッドパスゲーターについては、効果をわかりやすくするために未装着時と比較してみます。未装着時は履き口に泥が詰まっているのがわかる一方、マッドパスゲーター装着時は泥が詰まることもなく、不快感はゼロ。また、テープやラップの場合、何重にも巻き付けないと泥の侵入を防ぐことができませんが、同製品は1周ぐるっと巻き付ければ良いため、取り外しも簡単です。汚れを落として何度も使えるという点も魅力的でした。

最後にプルーフジャケットの効果を見てみます。ジャケットはこれだけドロドロになっていますが、泥が染みてくることもなく、ジャージには一切泥がついていませんでした。また、当日は晴天で気温も高かったのですが、ウエア内に熱が溜まってバテてしまうということもありませんでした。つまり、効果は抜群! これなら泥シミを気にすることもないですし、家に帰って泥を落とすという面倒な手間も省けます。

結果として、これだけ泥まみれになりましたが、マディの中でも快適に走ることができました。今回の記事を参考に、マディコンディションを全力で楽しんでいただきたいです!

  • この記事を書いた人

アニマルハウス

世界でも稀な「オフロードバイクで生きていく」会社アニマルハウス。林道ツーリング、モトクロス、エンデューロ、ラリー、みんな大好物です。

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