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全てのパーツに意味がある、ロッシ高橋のX-TRAINER300に迫る

レースで勝つには練習やトレーニングはもちろんですが、マシンのセットアップも欠かすことのできない大切な要素です。自分の好みやレースのシチュエーションに合わせてマシンを作り込み、トラブルを最小限に抑えて上位を目指すため、ここではロッシ高橋選手のハードエンデューロマシンを参考に、そのポイントを見ていきましょう

全日本ハードエンデューロ選手権G-NETに競技として真摯に取り組み、トライアル仕込みのテクニックを駆使して2014年から2019年まで6年連続チャンピオンに輝いたロッシ高橋選手は、日本のハードエンデューロを「選手権」として確立させた立役者と言えます。

そんなロッシ選手はマシン作りに妥協を許さないことでも知られ、毎年開幕戦にお披露目される新しいセットアップを施したマシンには多くの注目が集まります。2023年はBETAのX-TRAINER300にダートフリークのパーツを多数装着し、そこにオリジナルな工夫も追加しています。ハードエンデューロに限らず参考になる事例がたくさんあるので、ここで紹介していきましょう。

BETA
X-TRAINER300 IKD

2ストローク300ccのエンジンはハードエンデューロにおいて最もベーシックな選択となっています。急斜面を登ったり、ガレ場を走行する上で軽量であること、低速トルクが太いこと、高回転のパワーがあることが求められています。マシン名の最後に付けられている「IKD」の意味は、すでに2023年シーズンを戦い終えた後の売却先が決まっているらしく、その方のお名前をつけて走っているのだとか……。これから一年間、ロッシ選手が大切にマシンを乗ってくれるという信頼の証ですね。

ZETA
SX3ハンドルバー TRIAL COMPETITION
¥16,940(税込)

まずハンドルバーにはテーパー形状で剛性が高く、用途や好みに応じて様々な形状から最適な一本を選ぶことができるZETAのSX3ハンドルバーを使用しています。ロッシ選手が選んでいるのはトライアルIAS野崎史高選手モデル。ロッシ選手がトライアル出身のため、トライアルのハンドルバー形状に近いものが使いやすいということもありますが、一番のメリットは立ち上がりが鋭くなっていて、ハンドルバーにスイッチ類を装着するスペースが広いことだそう。レーサーはセルボタンくらいしかハンドルにつけない人も多いですが、ロッシ選手は電動ファンのON/OFFスイッチや晴/雨マッピングスイッチをハンドルバーに装着し、レース中にハンドルを握ったまま操作できることを重要視しているのです。

なお、現在ZETAからは野崎選手の要望で改良されたTRIAL COMPETITON 2が発売中とのこと。

ハンドルバーパッドを切り抜いて中心に腕時計を配置し、レース中でも一目で時間が確認できるようにカスタムしているのも、時間との戦いであるハードエンデューロならではのポイントですね。

セルスイッチ、エンジンマップ切り替え、電動ファンのスイッチなどをハンドガードのステーやマスターシリンダーと干渉することなく全て装着するために、SX3ハンドルバーが最適なのだとロッシ選手。

左手にはセルスイッチと電動ファンのスイッチ、右手には晴/雨のエンジンマップ切り替えスイッチを装着し、全てハンドルを握りながら親指で操作可能な状態にしています。実際、レース中にコンディションやセクションに合わせてエンジンマップを切り替えることがあるとのこと。

「基本的には晴れモードで走行するのですが、Z字を切って押し上げないといけないようなシーンなどでは雨モードにすることがあります。雨モードだとアクセルを戻した時のエンジン回転の落ち方がリニアで、晴れモードとはまた違ったグリップ感があるんです」(ロッシ高橋)

ZETA
レースグリップ
¥2,400(税込)

ZETA
バーエンドプラグ スイベル
¥2,200(税込)

グリップの形状は手のサイズや好みもあると思いますが、ロッシ選手は雨などで濡れても指に引っかかりやすいワッフル形状を好んで使っています。なお、ハンドガードはオープンタイプ。これにはこだわりがあって、ハンドリングの軽さとウッズ走行中に木の枝に弾かれにくいためとのこと。

「転倒した時などにスロットルとバーエンドの隙間に砂が入って、スロットルを回した時にジャリって言うのが嫌なんです。バーエンドプラグ スイベルはスロットルと共回りしてくれるので、砂が入り込まず、快適な操作性をキープできるんです」(ロッシ高橋)

ZETA
ピボットレバー FP ブレーキ/クラッチ 3フィンガータイプ
¥7,920(税込)

レバーは高強度アルミ合金の鍛造3フィンガー。全長が短いだけでなく可倒式で折れにくく、使い勝手に優れています。ロッシ選手は指を引っ掛ける面の角を削って操作感を向上させています。

ZETA
リヤブレーキクレビス
¥2,860(税込)

そしてハンドルバーやレバーと同じくらい大事なリアブレーキペダルを最適化する秘密が、このリアブレーキクレビスにあるのだとロッシ選手は言います。

「僕は下り坂でのブレーキ操作をやりやすくするためにリアブレーキペダルの初期位置を高く設定しているんです。このZETAのリヤブレーキクレビスは純正よりもネジが浅く噛むので、ペダルの調整幅が広くなっているんですよ」(ロッシ高橋)

ロッシ選手はブレーキペダルをここまで高くしています。

ZETA
アルミニウムフットペグ
¥14,850(税込)

フットペグはアルミ削り出しタイプ。排泥性もよくグリップに優れ、これまで何年もトラブルがないため信頼しているパーツとのこと。歴代のマシンから受け継がれてきた傷跡が、これまで走ってきたセクションの過酷さを物語っていますね。

DF-CRAFT
各部ガンコート加工

ラジエターガードやウォーターポンプカバー、排気デバイスのカバーなどにガンコート(表面硬度、耐薬品性、高放熱効果を兼ね備えたコーティング)を施しています。それぞれ強度が向上し破損しにくくなるのと、放熱効果もあるとのこと。ラジエターをガンコート加工すると転んだ時にフィンが潰れにくくなるのだとか。

「ファッションです!」と嬉しそうに顔を綻ばすロッシ選手。

ZETA
リンケージガード
¥5,720(税込)

こちらは丸太やステアなどを超える際にリンクをヒットさせて破損しないためのガードパーツ。自分で穴をあけて加工して取り付ける汎用タイプなので、様々なアンダーガードに取り付け可能です。

「アンダーガードとの一体型やリンクを丸ごとカバーするタイプなど色々使ってきましたが、これが一番シンプルで良いです。樹脂なので丸太の上で滑ってくれてクリアしやすいです」(ロッシ高橋)

DRC
デュラ フロント スプロケット
¥3,080(税込)

ハイスピードよりも低速トルクを多用するハードエンデューロではフロントスプロケットを小さくするカスタムが主流。純正14丁のところ12丁に落とすことで極低速ギヤ比での使用が可能です。

ZETA
ジグラムパッド ダートシンタード
¥4,950(税込)

前後ブレーキパッドはジグラムパッドを採用。軽く握れば軽く効き、強く握れば強く効くためコントロールしやすいところが特徴。

「新品の状態でもちゃんと制動力を発揮してくれ、雨で濡れても効果が落ちにくいんです」(ロッシ高橋)

TWIN AIR
パワーフィルター
¥3,850(税込)

エアクリーナーには上から市販のクイックルワイパーを被せることで汚れの付着を軽減できます。走行後は上のクイックルワイパーを剥がして新しくするだけで、数回の走行はエアクリーナーを洗わずに利用可能なんだとか。

UNIT
ワイヤレスアワーメーター
¥5,060(税込)

エアクリーナーカバーの下から出てきたのは、エンジン稼働時間を一目でチェックできるワイヤレスアワーメーター。ここに入れておくことで洗車時や雨天時の浸水を予防できるのだとか。

さらに雨のレースではフロントフェンダーの隙間にタオルを入れたまま走ります。こうすることでちょっとした渋滞の待ち時間などに濡れたグリップやグローブ、シートを拭いたり、泥汚れを落としたりできるのだそう。

いかがでしたでしょうか? このように妥協のないマシン作りがあってこそのV6チャンピオン・ロッシ高橋が誕生したわけですね。パーツやノウハウをぜひ参考にしてみてください。

  • この記事を書いた人

アニマルハウス

世界でも稀な「オフロードバイクで生きていく」会社アニマルハウス。林道ツーリング、モトクロス、エンデューロ、ラリー、みんな大好物です。

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