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教えてサカオニbot! 大人がハマるミニバイクの魅力10選

※当記事の取材時は「X」ではなく「Twitter」だったため、記事内では「Twitter」表記で統一いたします。

オンロードでもオフロードでもミニバイク(ここでは排気量や車体の小さいキッズ向けバイクや初心者向けのファンバイクのことを指します)でレースを楽しむ人は多く、スクーターでモトクロスをしたり、カブで林道を走る楽しみ方はこれまでもありました。しかし、ハードエンデューロもミニモトでやっちゃおう、となったのはここ最近の新しい動きだと思います。

きっかけはCGCハードエンデューロ選手権。ミニバイククラスという初心者向けのクラスは元々ありましたが、そこから派生してミニバイクで難しいコースを走るミニG-NETというクラスが誕生しました。CGCの最高難易度であるゲロゲロクラスと同じコースをミニバイクで走り「絶対に一周できないから参加費は無料でいいよ」というお遊びコンテンツでした。さらにそこから「ミニバイぱにっく」という、よりお祭り感覚の強いイベントに発展し、今では本家CGCと同じくらいの盛り上がりを見せています。

そんなミニバイハードエンデューロブームの火付け役であり、オフロードバイク界のインフルエンサーとして活躍するサカオニbotさんに、ミニバイクの魅力を語ってもらいました。

サカオニbot
Twitterフォロワー数3,118人ながら、ダートフリークを中心に様々な企業からサポートを受けるオフロードバイク界のインフルエンサー。モトクロスやトライアルのトップライダーというわけではなく、大きなレースで優勝するわけでもなく、本人曰く「ただTwitter上手いだけ」なのに多大な影響力を持つ。フリースタイルモトクロスのDAICEと共に「ビジバイぱにっく」「ミニバイぱにっく」の発起人として活躍。
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ミニバイクは「挑戦できる」のが楽しい

「ミニバイクはパワーがないのと車体が小さいので、色々なことに挑戦できるのが楽しいんです。例えば、僕はフルサイズしか持ってなかった時はウィリーが全然できなかったんですよ。フロントタイヤを安定角まで上げるためにちょうどいいパワーを瞬間的にかけないといけないので、パワフルなフルサイズマシンだとコントロールがとても難しいんです。その点ミニバイクだとパワーが出過ぎることがないし足もつくので、少しくらい失敗してもリカバリーしやすいんです。ミニバイクで練習して感覚を覚えてからはフルサイズでも同じようにできるようになりました。

ウィリーはただのパフォーマンスのように思われがちですが、実はこの動きにはハードエンデューロに必要な要素がたくさん詰まっているんです。ガレ場でバイクの向きを変えるためのフローティングターンや、ヒルクライム中にフロントを浮かせてラインを変える動き、ステアケースや丸太越えなど、ウィリーを習得することで確実にハードエンデューロが上手くなりますよ」

「できない」を工夫するのが楽しい

「ミニバイクはとにかくパワーがありません。例えばヒルクライムで、フルサイズの250ccなら助走のスピードとパワーで誤魔化せちゃうところも、ミニバイクは誤魔化せないからしっかりスキルが試されます。例えば僕はヒルクライム中に意識していることがあって、常にフロントタイヤを地面から少しだけ浮かせて走るように心がけているんです。ミニバイクはタイヤも小さいので、小さな根っこや石でもフロントタイヤに当たると抵抗になって失速してしまいます。なので少しウィリー気味に走ることでリアタイヤだけで走る時間を増やして、スピードを維持していくんです。

そういった工夫を考えること自体が楽しいですし、フルサイズよりも体力を使わないから長い時間練習できます。そうしてミニバイクで身につけたこういう感覚がフルサイズに乗った時でも応用できるんです。フルサイズを真面目に乗っててもなかなか上達できないという人は騙されたと思って一回ミニバイクに乗ってみてください。驚くほど上達できるかもしれませんよ」

ミニバイクの「ライン取り」が楽しい

「ミニバイクはフルサイズと違っていろんなラインで走ることができます。フルサイズってパワーがある分、最低速度が高いんですよ。スピードを落としすぎちゃうとタイヤが空転して登れなくなっちゃうんですね。だけどCRF125FやTT-R125LWEは低速トルクがあって吹け上がりが優しいのでゆっくり走ることができ、その結果、フルサイズがいけない難しいラインに入ってトコトコ登ることができるんです。人とラインが違うので渋滞を避けやすいですし、ウッズの中ではハンドル幅が狭いのやホイールベースが短いのもメリットになります。

まぁ実はフルサイズと違ってパワーがないのでライン取りで工夫して登るしかないっていうのが本当のところですね。そういう意味では工夫する楽しさに似ていますね」

ミニバイクの「マシン特性」が楽しい

正式な選手権ではないし統一された競技団体でもないため、ミニバイクの定義は特に定められてはいません。一般的にはフロント21インチ、リア18インチのフルサイズマシンよりも小さいタイヤサイズの車両という認識で良いと思います。多くのライダーはフロント19インチ、リア16インチの4ストローク125ccや2ストローク85ccを選択しています。ここではサカオニbotさんに代表的な車種のマシン特性について聞いてみました。

HONDA
CRF125F
メーカー希望小売価格:¥346,500(税込)

「とにかくエンジンがすごく優しい。低〜中回転のトルクがすごく厚くて、ゆっくり走ることが得意なバイクです。誤解されやすいのですが、ハードエンデューロにおいてゆっくり走れるというのはすごい強みなんです。例えば斜面をジグザグにZ字を描いて登るような時に、アイドリングの少し上くらいの回転を使ってじわーっと登ることができます。重心も低くて捲れにくいし、スピードが乗らなくてもエンストせずに進み続けることができます。また、ハンドルが低くて胸の位置でバイクを押せるのも良いですね」

YAMAHA
TT-R125LWE
メーカー希望小売価格:¥451,000(税込)

「4ストローク125ccにしてはパワーがあってよく回るエンジンだと思います。CRF125Fが4速ミッションなのに対してTT-R125LWEは5速まであって、1-2-3ギヤの繋がりがすごく良いです。シフトチェンジは少し忙しいですが、シフトアップしてスピードを出すのがすごく楽しいバイクです。助走がしっかりある直登系のヒルクライムはCRF125Fよりも登れます。あとサスペンションに余裕があるのでフルボトムしにくいのも良いです。CRF125Fよりも価格が高いのですが、予算に余裕がある人はTT-R125LWEをオススメしたいです」

また、KX85LやRM-85など2ストローク85ccマシンについては「2ストローク85ccは4ストローク125ccよりもパワーがあって有利と思われがちですが、実はハードエンデューロをやるのは相当難しいマシンです。そもそもモトクロスマシンだからとてもピーキー(出力の上がり方が急)だし、低速トルクが少ないから絶妙なクラッチワークが求められます。重心も高くて捲れやすく、フロントが浮いてくるのを事前に察知してクラッチを一瞬切って、回転を落とさないように繋ぎ直すような繊細の操作をしてあげないといけません。2ストローク85ccのミニバイクでハードエンデューロができるのは、かなりの上級者だと思います」とのこと。

ミニバイクの「カスタム」が楽しい

ミニバイクは車両本体価格が安いため、カスタムに予算をかけることができるのもメリットです。ダートフリークではハンドガードやスキッドプレートなど、エンデューロに必須なガードパーツなども専用品を発売しています。また、ハンドルバーやステップ、スプロケットなどを変更することで乗り心地を向上させることもできますよ。

ZETA
アーマーハンドガード 4stミニ
¥16,500(税込)

ZETA
EDスキッドプレート CRF125F用
¥30,800(税込)

ZETA
CXハンドルバー 4st mini125
¥10,780(税込)

ZETA
ED スキッドプレート TT-R125LWE´23
¥30,800(税込)

「カスタムについてはまずガード類ですね。ミニバイクは最低地上高が低いため、アンダーガードは絶対に必須です。また、TT-R125LWEは純正ハンドルが鉄で曲がりやすいため、ハンドルバーも変更をオススメします。僕はZETAのSX3ハンドルバーのMini Racer-HIGHを使っています。また、CRF、TT-R共に前後スプリングをハードにすると大人でも乗りやすくなります。こちらはダートフリークさんでも開発中と聞いてますので、発売を楽しみにしています。

軽量化と剛性アップという面で前後リムをZ-WHEELのS30リムに変更するのも有効です。あと個人的に外せないのがZETAのピボットレバー(クラッチ側はパーチ)です。短くて握りやすく、折れにくいので必須装備と言えます」

ミニバイクの「タイヤ」選択が難しくて楽しい

「ミニバイクに適応するハードエンデューロタイヤはあまり多くありません。リアに関してはiRCさんのiX-09w GEKKOTAの16インチがすごくグリップが良いのですが、難所が難所ではなくなってしまうので、練習の時はあまり使いません。最近ではダンロップさんのMX14ですね。モトクロスタイヤですが意外と根っこやガレでグリップしますし、ブロックパターンがかっこいいので気に入っています。フロントはダンロップさんのMX33かiRCさんのVX10を好んで使っています。コンパウンドの硬いタイヤは根っことかで弾かれてしまうし、柔らかいと移動路でヨレてしまいます。理想としては移動路でスピードが出せて、難所はテクニック次第でなんとかなるタイヤが欲しいんです。ミニバイクがもっと流行ってタイヤの選択肢も増えると嬉しいですね」

ミニバイクで「フルスロットル」できるのが楽しい

「普通にフルサイズに乗っている中級レベルくらいのライダーでも、意外と乗りこなせていないことが多いと思います。その点ミニバイクは移動路でバイクを振り回して走れるのも楽しいんです。フルサイズだと怖くてなかなかアクセル全開にできなくても、ミニバイクならできます。気持ちはまるでトップライダーです。ハードエンデューロの移動路でスピードを出すのも楽しいですが、愛知県のスラムパーク瀬戸のような小さいモトクロスコースなら普通に楽しく走れちゃいます。ジャンプはあんまり得意なマシンではないですが、サスを固くしたりすればちょっとくらいなら耐えてくれますよ」

スラムパーク瀬戸のモトクロスコースの走行動画はこちら!

ミニバイクで「仕上がる」のが楽しい

「同じコースで同じ時間乗るなら、フルサイズの方が大変なんです。ミニバイクは疲れにくいから同じコースでも長く乗れて、たくさん練習できます。それでも結局、仕上がる(疲労の限界を迎える)ことに変わりはないんですけどね。フルサイズで仕上がると本当に限界で、死んじゃいそうになるんですけど、ミニバイクだと少しだけ余裕があって、『楽しかったー!』っていう仕上がりなんです。

ミニバイクでハードエンデューロをやっていると『意外といけちゃった』か『物理的に絶対に無理だから諦めよう』というパターンが多いのですが、CROSS MISSION勝沼で開催されたM-netは絶妙なコース設定で、難しいのですが頑張ったらギリギリいけそうだから諦めるわけにいかなくて、でも暑くて死にそうで、少し進んで休憩してを繰り返してました。過去に出場した中では雨のCGC大町が本当に難しくて、難易度で言えばそっちの方が高かったのですが、この『進めるのにキツイ』っていう意味ではこれまでで一番キツかったですね。

圧倒的にバイクが軽いからバイクが逆さになっちゃってもリカバリーしやすいし、マシントラブルがあってもなんとかなります。そういう意味ではフルサイズよりも思い切って遊べるところもミニバイクの魅力ですね」

ハードエンデューロにおける「仕上がる」はサウナにおける「ととのう」に似た感覚で、「仕上がる」ために自分のレベルよりも少し高いレベルのコースに挑戦してスキルアップしていく流れがあります。一歩間違うと怪我やマシンを壊すことにも繋がってしまうのですが、その点、ミニバイクの方が安全に「仕上がる」ことができます。

ミニバイクで遊んでる「人」が楽しい

「僕らがミニバイクやカブで遊んでいるのには『オフロードバイクの裾野を広げる』という大きな目的があります。TwitterやYouTubeなどでオフロードバイクに興味を持つ人が増えても、モトクロスレースのピリピリした雰囲気などに気圧されて仲間ができにくかったり、上達する前に怪我をして辞めてしまったりするのを防ぎたいんです。そもそもハードエンデューロをやってる人って、モトクロスやエンデューロに比べるとまったり和気藹々としていて初心者歓迎なところがあるのですが、その中でもミニバイクをやってる人は本当にファンライドなんです。たまに身内のノリで『絶対負けねえ!』みたいな煽り合いもしていますが、そういう冗談が言い合えるからこそ仲良くなりやすいんですね」

こちらは山梨県クロスパーク勝沼で開催されたCROSS MISSIONの一コマ。関東在住のシライのニノケンさんと中部在住のサカオニbotさんがレース中に煽り合いながらバイクを押しています。居住地域が遠く、年に数回のイベントでしか顔を合わせなくとも、Twitterとミニバイクが2人を繋げています。

「ミニバイぱにっく」は珍しいバイクや、面白いコスプレでも参加できちゃいます。このノリの良さも大きな魅力ですね!

ミニバイクの「イベント」が楽しい

「数年前、僕がCGCにミニバイクで出ていたらCGCのスタッフさんやDAICEさんが興味を持ってくれて、ミニバイクだけのレースが始まって、そこから『ミニバイぱにっく』が生まれました。最近ミニバイクのイベントがすごく増えましたよね。大阪のプラザ阪下では「ちびロク」っていうミニバイクの6時間耐久レースがあったり、つい先日は北海道のダートバイクプラス札幌で『ジャッジメントカップMINI』っていうミニバイクのスプリント&エンデューロレースがあって、僕も参加してきました。石川県の金沢ブラックボアでは『真夏のバイカーズクロス』というスプリントレースのイベントが告知されてますし、関東ではライダー主催で『M-net』が始まったりして、すごく盛り上がっているのを感じます。

主催者もライダーもノリが良いので、勢いで話が進んで、それ自体が面白いです。Twitterで拡散されてエントラントが集まって、みんなお祭りに参加したいからミニバイクを買っちゃったり、買えない人は人から借りて参加したり。楽しいから遠くへも足を運ぶし、ミニバイクはトランポの相乗りもしやすいので経済的ですし、本当に敷居が下がっているのを感じます」

この記事を全部読んでくれたあなたも、きっとミニバイクが欲しくなったのではないでしょうか? すでにフルサイズを所有している人も、そうでない人も、一家に一台ミニバイク! このムーブメントに乗っかって、楽しみながら上達しちゃいましょう!

  • この記事を書いた人

アニマルハウス

世界でも稀な「オフロードバイクで生きていく」会社アニマルハウス。林道ツーリング、モトクロス、エンデューロ、ラリー、みんな大好物です。

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