5秒速くなれる!?「メカチク」がWEBで復刻!
本記事の内容は、「ダートクール2003 No.4」掲載の「読むだけで5秒速くなれる メカのウンチク話」を、2024年現在の情報に合わせて一部注釈や文章、図の修正を行い掲載しています。
■2003年#04より
速く、そして楽しく走るために欠かせないメカ知識とモトクロッサーの正しい整備方法を紹介するメカのウンチク話。レジェンドメカ小菅登氏の、タメになるウンチク話をたっぷり紹介いたします。
速く安全に気持ち良く走るためのセッティング - ライディングポジション編 #4
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● ペダルも調整すれば操作性が向上する ●
チェンジペダルはエンジンの左後方下部から出ているシフトシャフトに取り付けてある。
取り付け方法は歯車状の溝にはめ、脱落防止のボルトで固定する。
歯車状になっているので取り付け位置を上下に変更することができるが、
ひと山変更しただけでペダルの先端が大きく上下する。
シフトペダルはブレーキペダルと違い、踏み込むだけでなく掻き上げる動作も必要なので、
通常はストックと同じステップとほぼ水平の位置になる。
とは言え、足の大きさも人それぞれ。
特にミニモトに乗る大人やキッズはシフトペダルの位置が合わない場合もある。
シフトペダルを踏み込む動作は比較的楽にできるので、
セッティングはシフトアップ時の掻き上げ動作の方を重視する。
具体的にはペダル先端の下にブーツ がスムーズに入り込めるかどうか、
そして、先端がブーツのどこの部分にペダルが当たるかチェックすること。
あまりブーツの先の方だと操作し難いし、足首に近い方だとブーツを下に入れにくい。
うまく親指の第一関節と第二関節の間にペダルが来るようにセットする。
ブレーキペダルは先端の踏み板の高さを上下に変更できる。
ここで注意して欲しいのはペダルの位置が上下しているだけで、
踏み始めから利き始めまでの踏み込み量が変るわけではないこと。
つまりペダルの遊び調整ではなく、ペダルの初期位置の調整である。
それでも実際に走るときの操作感は大きく変わるので、自分の好みの位置に設定しておくことは重要だ。
ブレーキペダルのセットアップにはこれまた好みがあり、
デイモン・ブラッドショーやパストラーナはステップよりもはるかに高くセットしている。
しかし、一般的には上にセットし過ぎると座った状態では操作しにくかったり、
スタンディングフォームのときに誤って踏んでしまったりすることもある。
逆に下過ぎると腰を引いたフォームで操作しにくい。
したがって、ブレーキペダルはステップと常識的な位置である水平の位置から5mmほど下にあわせた状態にセットし、
後は実際に走行しながら探っていくといいだろう。
ペダルの調整方法はペダル後方にあるマスターシリンダーのプッシュロッドの長さを調整することでシーソー状に変更することができる。
シートとステップに関しては、ページ下部に後述する。
シフトペダルの根本をひと山変えただけで、ご覧のように大きく上下する。
したがって一般的にはストックと同じステップと水平の位置がいいだろう。
ただし足が大きい大人がミニモトに乗る場合は、上に上げた方が操作しやすい場合もあるし、
逆に子供は下にセットした方がいい場合もある。
普段の練習日にでも一度試してみるのも良いだろう。
ブレーキペダルを上下に動かしてみた。
実際にはここまで大きく動かす必要はないが、これほどの調整量があること知っておいてほしい。
シフトペダルと違い微妙な高さ調整が可能で、少しの変化でも操作感は大きく変る。
ブレーキレバー同様、ぺダルも単なる高さ調整なので、
深く踏み込まないと効かないようならパッド交換やエア抜きが必要だ。
取り付けは、シフトシャフトの外側先端の歯車状の溝にペダルをはめる。
そのため微妙な調整はできない。
余談だが曲がったシフトペダルを無理やり戻すと、シフトシャフトにストレスがかかり、
シールを痛めオイル漏れに繋がるので注意。
シフトペダルの先端は左足の親指の第一関節と第二関節の間に来るのが理想。
写真は裸足だが、ブーツを履いた状態でこの位置に来るようにセットする。
まれにメーカー純正のペダルでも年式によって高さが半段違うものがあるので、
どうしても自分に合わない人はバイクショップに相談してみよう。
ブレーキペダルの高さ調整を行うブッシュロッドのアップ。
ラバーブーツをめくり、Aのロックナットを緩め、Bのプッシュロッドを回すとシーソー状にペダルが上下する。
好みの高さに合わせたら、ロックナットで固定。
最後にラバーブーツをよじれないように被せておく。
【デイモン・ブラッドショー】
`90年代のAMAを代表する天才ライダー。
彼の全盛期のブレーキペダル位置はクラッチカバーのYAMAHAのロゴが隠れるくらいまで高く上がっていた。
腰を大きく引いた状態でもブレーキを踏めるようにセットアップ。
さらにシート前方に座ってからは、ステップからブーツを浮かしつつ、真上から押し付けるように微妙なブレーキ操作を行った。
【シートとステップ】
上の写真の通り、ファクトリーライダーは自分の体格などに合わせてシートも独自の形状のものを使用する場合がある。
しかし、一般のライダーはシートの専業業者にオーダーして作るしかない
(メーカーによっては厚みの違うシートをオプションで用意している場合もある)。
オリジナルシートは比較的高価なので、注文するなら自分で不具合をよく分析して業者に相談するといいだろう。
さてシートに関連した話だが、フープスを走行中にリアが跳ね上げると、
シートで尻を叩き上げられるという現象が起きる。
尻をシートで叩き上げられると前輪方向へ重心が移り、最悪は前転クラッシュに繋がる。
後輪が跳ね上げられてもライディングフォームが崩れなければ転倒までは至らない場合が多い。
この尻への叩き上げ現象が頻繁にあるなら、それを解消する方法を考えたい。
ある程度はライディングフォームやテクニックで解消することもできるだろうが、
そもそもフープスでは思いっきり腰を引いているので、シートと尻のクリアランスが少なければ結局、
尻叩き上げ現象は起きるもの(フープスは大柄のライダーが有利という理由はここにある)。
この尻叩きを避ける方法としては「シートを下げる」「シートレールを下げる」「ステップを上げる」という方法がある。
しかしフープスで尻に当たっているのはシートの後端であり、シートの後端はもともと薄いので削ることができない。
むしろステップを高くしたり、シートレールを下げる方が効果的。
CRなどはサブフレームの下側取り付けボルト孔を長円にして、シート高を下げる加工がしやすい。
ステップを高くする場合はステップの歯を溶接で付け足すことになるが、その作業はバイクショップなどに相談するといいだろう。
[#05へ続く]
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【クレジット】
Text: Dirt Cool
Illustration: Takuma Kitajima
Special Thanks: Noboru Kosuge
※転載不可