ユーザーから愛されるニーブレイスブランドPODから、ハイエンドモデルK8の新バージョン3.0が登場。その秘密を探ります
上手い下手は関係なし、時速10km/hでも靭帯を傷めます
オフロードバイクに乗るために必要なものは何か。モトクロスやエンデューロの選手たちに聞いたときに返ってくる答えは「一にヘルメット、二にブーツ、そして三にニーブレイス」だと思います。擦り傷上等のオフロードではウエアそのものにほとんどプロテクション性能が無いこともあり、頭と足先、そして膝だけはなんとしても守らなければなりません。
「膝……?」と思った方もいるかもしれません。ヘルメットやブーツはオートバイには当然の装備として認知されていますが、まだまだニーブレイスはその必要性がライダーにも周知されてないと感じています。脳がある頭、地面に最も近い足先を守るのはわかるとして、なぜ「膝」なのか。こんなことを言うと「またオフロードライダーは怖い怪我の話をして……」と思われがちですが、膝には靭帯があるから厄介なのです。骨折ならボルトを入れたりギプスで固定すればだいたい元通りになってくれます(もちろん修復不可能な場合もあります)が、靭帯というのはちょっとしたことで”修復不可能な怪我”を負ってしまいます(軽度の損傷であれば自己回復する場合もあります)。筆者は、関東の草レースをノービスクラスで楽しむ20年来のビギナーライダーですが、膝の靭帯を傷つけてしまった経験があります。思い切り膝に負担がかかるような転倒ではありませんでした。

向かって右の左足が妙に太いのがわかりますね……
雨の日に低速でスリップダウンし、左足がふいにでてしまったのですが、その時のスピードは10km/hにも満たなかったはずです。その時はこの世の終わりかと思うくらいに痛くて、痛みを紛らわすために叫び続けました。ニーブレイスをしていたので、内側側副靭帯の繊維が少し切れただけにとどまりましたが、2ヶ月は満足にバイクに乗れなかったし、その後たっぷり1年は痛みました。スポーツ科の医者には「もしニーブレイスしていなかったら、十字靭帯を切っていて取り返しがつかないこともあったよ?」と脅されて背筋が凍ったのを覚えています。十字靭帯の場合は手術が必要になることが多く、治りも遅いのだとか。僕がニーブレイスをするようになったきっかけは、モトクロスをかじりはじめたからなのですが、この靭帯の怪我をしてからは、オフロードを走りたいという人に「できるだけニーブレイスは、早めに買ったほうがいいよ。レベルは関係ないよ」と言い続けています。膝を怪我した多くのライダーが、同じことを言っています。後悔は先に立ちません。
そんな大事なプロテクターだからこそ、この度リリースされたPODの最高峰モデルK8をおすすめしたいのです。
POD
K8 3.0 左右セット
サイズ: M・ L ・ XL
価格: ¥156,200(¥142,000)
品番: M:G5069
L:G5068
XL:G5071
重量: 片側約790g(実測)
よりきめ細やかなサイズ展開と、頑強な素材
PODの普及モデルであるK4と、最高峰モデルK8はそれぞれ違いはあるものの、基本設計はどちらも同じです。K8のほうが先にリニューアルされるため、今回のニューバージョン3.0もK8が一足先にリリースされました。いずれK4も3.0になるのかもしれませんが、それはまだだいぶ先の話になりそうです。
選ぶ際に注意したい点としては、K8はK4に比べ、サイズ展開がよりきめ細やかになっていることが挙げられます。K4はXS/S ・ M/L ・ XL/2XLそれぞれのサイズ対応幅が広いのですが、K8のM、L、XLは対応する幅が狭くなっています。サイズ表にしてみると、わかりやすいですね。
K4
サイズ 膝周り寸法
XS/S 29.5cm ~ 34.0cm
M/L 34.0cm ~ 38.0cm
XL/2XL 38.0cm ~ 42.0cm
K8
サイズ 膝周り寸法
M 34.0cm 〜 36.0cm
L 36.0cm 〜 38.0cm
XL 38.0cm 〜 40.2cm

筆者は右と左で1cm太さが異なりました。サイズを変えるほどではありませんでしたが、膝を痛めたことがある人などは特に左右でサイズをしっかり計った方がいいでしょう
K4よりも、対応する膝周り寸法の幅がせまいため、サイズ合わせはしっかりしておきたいところです。やり方は、衣服は着けずに膝の皿(膝蓋骨)の下部で太さを測ります。メジャーがなければ、紐で目印をつけて物差しで確認すればOKです。よりサイズが的確な装具を使用したほうが、高い防御効果が期待できるのは言うまでもありません。
また、K8はミリタリースペックの鍛造カーボンコンポジット製のフレームを採用しているため、グラスファイバー製のK4よりも軽量で頑強となっています。防御能力とは直接関係ありませんが、仕上げはうっとりするほど美しく、所有感という点でも圧倒的と言えるでしょう。
より防御能力高く、使いやすく進化
K8がバージョン3.0になって進化した部分は多岐に渡ります。まずはわかりやすい使い勝手の部分から見ていきましょう。ひときわ目に付くのは、全面スムージングされてパンツの内側にひっかかりづらくなった点でしょうか。旧型の形状と比べると一目瞭然です。旧型でもこれといって不便は感じませんでしたが、3.0になってよりパンツを履きやすくなりました。特に最近はぴったりしたサイズのパンツがプロレベルのライダーを中心に好まれているため、着脱時のさらなるスムースさを求める声が生み出した結果と言えるかもしれません。これには、ひっかかりが少なくなることでパンツの内側へのダメージが少なくなるという副次的な効果もあります。ニーブレイスですぐにパンツに穴が空いてしまう、というライダーは3.0の導入を考えてもいいかもしれませんね。

K8は膝パッド部分がスムージングされている

CE2で膝をしっかり守ってくれる新型のニーカップ。普段は肌に当たることなく自然な動き
スムージングされたニーカップはこのモデルからプロテクターの共通規格であるCEレベル2を取得。膝を打ち付けたときの単純な衝撃をしっかり逃してくれます。靭帯だけに注目しがちですが、膝の皿が割れたらやはり一大事ですからね。
ストラップもよりきめ細やかな配慮が施されています。これまでも3・4番はクイックストラップになっていて、一度サイズを調整しておけば毎回煩わしさを感じることはありませんでしたが、クイック部分を筒状にすることで縦の動きによりカチッと対応できるようになりました。
また、アダプティブロワーフレームと名付けられた下部のフレーム部分が、回転力の加わる衝撃を低減してくれるようになりました。膝下を変な方向にねじってしまうような転倒で、多いに役に立ってくれることでしょう。思えば筆者の膝も、ねじれが原因だったので、このK8 3.0なら負傷しなかったかもしれません(泣)。

バイクとの相性もよく、ニーグリップに不安感なし
今回、筆者も実際に装着して走行してみましたが、やはりパンツを履きやすいこととニーグリップした時のスムーズな感触はK4 2.0にはないアドバンテージでした。どんどんオートバイのエルゴノミクス技術も進んでいて、シュラウドまわりがスリムになっている昨今、その利点を100%活かすにはプロテクション側も変わる必要性が求められているのだと思います。最新・ハイエンドモデルということで価格は両足で15万6000円と決してお求めやすい価格ではありませんが、一生ものの怪我をしてしまう前に予防をしておきたいと願うあなたの強い味方になってくれることは間違いないでしょう。

いわゆる人工関節、合成靭帯を使用して多方向の動きを段階的にコントロール。リガメントは当然のこと、ヒンジ部分をまるごとリビルドできるキットもラインナップされています。このあたりのきめ細やかさ、アフターサービスがPOD人気の秘密でしょう