ヨツバサイクルというブランドでキッズ向けのMTB(マウンテンバイク)を手掛けているダートフリークから、初のe-MTBである「e-EDIT275」がCROSS SECTIONより登場。どんな乗り味に仕上がっているのか、実際にトレイルや舗装路を走るツーリングに連れ出してみました
フルリジッドのシンプルなe-MTB
近年よく耳にするようになっているe-Bikeという言葉ですが、スポーツタイプの電動アシスト自転車のことを指します。それも、単にスポーツタイプの車体に電動アシストユニットを搭載したものではなく、スポーツライディングに適したドライブユニット(モーター)を採用していることが特徴。”楽ができる”だけの乗り物ではなく、スポーツとして自転車を楽しめる乗り物といえます。
その中でも人気が高いのが山を走れるe-MTB。最近はダートバイク乗りにも、コースの下見用やトレーニング用として導入する人が増えてきています(※JNCCではe-MTBでのコース下見が許可されています)。MTBには、前後にサスペンションを装備した”フルサス”と呼ばれるタイプや、サスペンションはフロントのみとした”ハードテイル”というタイプがありますが、「e-EDIT275」はサスペンションは装備しない”フルリジッド”タイプ。その分、価格は29万8000円に抑えられていて、これからe-Bikeやe-MTBに乗ってみたいというライダーにはうれしい価格設定となっています。
CROSS SECTION
e-EDIT275
¥297,000(税込)
前後ホイールは27.5インチ。最近のレース向けMTBは29インチが主流ですが、日本の里山を走るには27.5インチが適しているという声も少なくありません。リジッドタイプのフロントフォークには、ボトルケージなどを取り付けられるダボが片側4つずつ設けられていて、流行りのバイクパッキング(自転車でキャンプに出かけるようなスタイル)にも対応できます。
e-MTBの心臓部といえるドライブユニットは、ダートフリークのオリジナル。中央に搭載されるセンターモーターと呼ばれるタイプで、重量バランスも良く、アシストの特性も含めて山道でも扱いやすいのが特徴です。最大トルクは65Nmを発揮し、激坂を登るようなシーンでも十分なアシストを提供してくれます。
バッテリーの容量は504Wh。エコモードでは約110kmのアシスト走行が可能です。山の中を1日走り回るにも十分な容量。バッテリーを搭載したことで、一般的な位置にボトルケージを取り付けることができませんが、その分ダボなどを設けられる黄色のキャリアを装備し、フレームもトップチューブの表と裏にもダボが装備されています。
変速ギアはリアのみの8速。フロントに変速機構を装備しないのは最近のトレンドです。変速段数は少ないですが、アシストのあるe-MTBなのでこの段数でも不自由を感じることはなさそう。8速用のチェーンは太めなのでアシストの力が加わっても切断されづらいという利点も。
トレイルでも確かな走行性能を実感
実際にどんな乗り味に仕上がっているのか、トレイルに持ち込んで走ってみました。舗装路を移動し、山道を上って下って、合計30kmほどのルート。ダート部分もフラットな林道のようなところから、木々の間を縫うようなシングルトラック、大きめの石がゴロゴロするガレた路面まで国内のトレイルで出会うようなシチュエーションはだいたい体験することができました。
e-Bikeのアシストは、一般の電動アシスト自転車に比べて、漕ぎ始めからガンっと効き出すのではなく、ペダルを回転させていくとアシストが立ち上がってくるようなフィーリングとなっているのが特徴。「e-EDIT275」はダートフリークとしては初のe-Bikeですが、アシストは自然なフィーリングでe-Bikeらしいものになっています。
また、この漕ぎ出しでガツンとアシストが立ち上がらない特性は、グリップの低い未舗装の上り坂でもリアが滑りにくく、MTBの使われ方とも合っていると感じました。
今回走ったコースには、結構な斜度の上り坂もありましたが、ペダルを回しているだけでスイスイと上っていくことができます。ただ、海外製のフルサスe-MTBの車体に任せて上っていける感覚とは少し違い、サスペンションが付いていないので大きめの石や木の根などを乗り越える際には乗り手が抜重操作などをする必要があります。発生するトルクも80Nmオーバーのドライブユニットに比べると、パワー任せに上る感じではないので、自分の力も使って走っているような感覚もありました。
トレイルの下りでは、サスペンションがないことで荒れた路面は手こずるのではないか? と思っていたのですが、実際に下ってみると予想以上に車体が安定していて、割とガレた下り斜面も楽しみながら走ることができました。これは車体のジオメトリーが、下りにも対応できるように設計されているため。すごく簡単にいうと、フロントフォークの角度がやや寝ていて下りの安定感を作り出しているので、サスペンションがなくてもある程度荒れた下りでも楽しむことができます。
街乗りやツーリングにも使える
舗装路も20km程度走りましたが、e-MTBとしてはかなり走りやすく、街乗りや通勤にも使えるモデルに仕上がっています。サスペンションがないことで、舗装路での抵抗が少なく、効率良く走ることが可能。少しアップタイプのハンドルが装備されているので、乗車姿勢も前傾姿勢がキツくなく、のんびり走るのが気持ちいい感じ。サイドスタンドや、バッテリーから給電されるライトも装備されているので、街乗りも快適にこなせます。
ハンドルはブレースを装備したBMX的な形状。しかもブレースの部分が22.2mmとなっており、これはスマホホルダーのようなアクセサリーが装着しやすいようにとの配慮です。
開発者のA氏によると「e-EDIT275」は「ダウンヒルから、ツーリング、それに街乗りまでで一台で何でも出来ることを目指しました。言うなればe-MTB界のセローですね」とのこと。オフロードの走破性も高いものの、モトクロッサーやエンデューロマシンのように”攻めた”設計ではなく、MTB初心者でもトレイルを楽しめるような作りになっています。バイクパッキングのように荷物を積んでツーリングに出かけることができるのも、セロー的な使い方を想定しているためです。
サスペンションは装備していませんが、フロントフォークはサスペンションタイプに交換することも可能。設計時から、そのことは想定されていて、140〜150mmトラベルのサスペンションフォークがマッチするジオメトリーとされています。試乗時には、サスペンションフォークを付けた車体にも乗ることができましたが、下りの走破性は飛躍的に高まっていました。
スタンダード状態に慣れて、もう少しペースを上げて走りたいと思うようになったら、好みのサスペンションフォークを導入してカスタムするのも楽しそう。「e-EDIT275」という「編集」を意味する車名も、ユーザーが手を入れて楽しんでほしいという願いを込めたものです。
ライドハックの読者には、ダートバイクで山道などを走ってきた経験を持つ人が少なくないと思いますが、バイクで走れる林道などは全国的に減少傾向。ただ、自転車でなら走れるトレイルは意外と近所にあったりもします。オフロードを走るために、遠方の林道やコースまで足を伸ばしていた人は、e-MTBを入手するともう少し気軽にオフロードライディングを楽しめるようになるかもしれません。
もちろん、普通のMTBでもいいのですが、トレイルに入るまでのアプローチは坂道も多く、結構体力を消耗するもの。せっかくのトレイルを楽しむために体力を残しておくには、e-MTBが最適なのです。とはいえ、海外ブランドのe-MTBは価格が上昇傾向で、下手をすると新車のエンデューロバイクと同じくらいの値段になっていたりします。e-MTBでオフロードライディングの幅を広げたいと考えているなら、「e-EDIT275」はまたとない入口となってくれるでしょう。