ZETA RACINGから新登場した「クロスラップ」を使ってラップタイム向上を目指す! 講師に馬場大貴選手を迎え、ラップタイム短縮を叶えるラインの選び方を教わりました
スピードを競うモトクロスでは、自分がどれくらいの速さで走っているのか、ラップタイムを可視化することでさらに効率的に練習することができます。また、目標タイムを設定し、それに近づくことができたら達成感や楽しさも感じるでしょう。しかし、タイムを測るにはストップウォッチなどの計測アイテムと、タイムを計測する人が必要になり、1人で練習に行くライダーには難しい方法です。それでもラップタイム向上を目指したい! そんな悩みを解決する製品がZETA RACINGから登場しました。その名も「クロスラップ」です。
ZETA RACING
クロスラップ
タイプ:28.6mmタイプ
品番: D3155
価格: ¥11,000(¥10,000)
重量: 259g
内容: モニター:1個
プッシュボタンスイッチ:1個
専用バーパッド:1個
タイプ: ブレースタイプ
品番: D3156
価格: ¥12,100(¥11,000)
重量: 261g
内容: モニター:1個
プッシュボタンスイッチ:1個
専用バーパッド:1個
回り止めクリップ:2個
ハンドル周りに装着し、手元のスイッチを使うことで1人で走りながらでもタイムを計測することができる練習用アイテムです。今回はクロスラップを活用したラップタイム向上の方法を、馬場大貴選手に伝授してもらいました。
1人でタイムアタック練習ができる、ZETA RACING クロスラップ
ZETA RACINGから新登場したクロスラップはいわゆるストップウォッチを内蔵したバーパッドです。元々ダートフリークが取り扱うDRCクロスモニターという製品がありましたが、同製品のリニューアル版として今回発売されました。
クロスラップは、タイムを測る本体とそれをはめ込むバーパッド、そして計測時に使用するスイッチの3つがあります。装着方法はまずハンドルバーの中央部にはめ込み、上からカバーを巻き、マジックテープで止める仕様になっています。
スイッチは本体に繋ぐことで操作ができます。グリップを握りながら親指でスイッチを押せるように、左側のグリップの近くに装着します。ネジ一本で取り付けることができるため簡単。これで取り付けは完了です!
計測モードは1周ごとのタイムを測るラップモード(LAP)と、各セクションのタイムを計測できるインターバルモード(INT)の2種類があります。また、モニターには時計・計測のトータルタイム・ファステストタイムの表示があり、確認することができます。
操作手順としては、まず本体についているON/OFF/STOPボタンを5秒ほど長押しして電源を入れます。次にMODE(モード)ボタンを押して計測モード(ラップかインターバル)を選択。その状態でスイッチを押せばタイム計測が開始されます。
計測が終わったあとはSTOPボタンを押してタイマーを止めます。+/−ボタンは、タイム計測終了後、各周のタイムを確認する時に使います。また、+/−ボタンを両方同時に長押しすることで表示データがリセットされるため、記録が確認できたらリセットして再度挑むという仕組み。このように3つのボタンとスイッチだけで操作できるため、簡単に使いこなせるのが魅力です。
開発担当の岩本さんにクロスラップの特徴を聞いたところ、「機能的にはDRCのクロスモニターと同じですが、DRC クロスモニターでネガとされていた部分を改善しています。たとえば、DRC クロスモニターは電池交換をするためにモニターの裏ブタを+ドライバーで外さなければならなかったですが、クロスラップは硬貨で開けるタイプにすることで作業しやすくしています。また防水性も高めていて、本体はIP55という防水規格を取っています。バーパッドの上からビニール素材のカバーをかけて固定することで、二重に防水効果が得られるようにしました」と、使いやすさと防水性を高めているとのこと。
クロスラップを使ってタイム向上を目指す
先述した通り、クロスラップは1人でも走行しながらタイム計測ができるため、タイム短縮の練習をするのにピッタリです。そこで、今回は講師にDFGサポートライダーの馬場大貴選手を迎えて、クロスラップを使った走行タイム向上の練習方法を伝授してもらいました! コースは愛知県豊田市にあるMXフィールドトヨタ。山の起伏を生かしたレイアウトが特徴のハイスピードコースで、高い速度域を維持できるかどうかでタイムに差がつきやすいコースです。
今回講師に迎えたのは馬場大貴選手。全日本モトクロス選手権IA1クラスに参戦していた経験があり、モトクロスを卒業した後もJNCCに参戦し、2021・2022年に2年連続でチャンピオンを獲得。現在もJNCCでトップを争いながら、自身のチーム「BABANA SHOX」の代表としてエンデューロ・モトクロス・キッズ体験や大人向けのバイク体験、スクールなど幅広いジャンルでオフロード業界を盛り上げています。
指導を受けるのは、ライドハック編集部伊澤。4歳からモトクロスを始め、全日本モトクロス選手権レディースクラスに挑戦した経験ありますが、最近は乗る頻度が減り走行タイムが落ちていることに悩んでいます。
ラップモードで1周全体の速さを知る
まずはウォーミングアップでコースを5周走行し、その後、指導前のタイムを計測します。クロスラップはラップモードに設定してスタートからゴールまで1周のタイムを測ったところ……、1分23秒54という結果になりました。
インターバルモードで部分練習
ラップタイムを測ったところで、馬場選手に私の走りを見てもらい、タイム短縮のポイントを絞っていきます。ライディングテクニックの要素は、姿勢やコーナリング、アクセルの開け方などさまざまですが、今回はライン取りにポイントを絞って練習していきます。
というのも、クロスラップのインターバルモードは特定のセクション、または範囲のタイムを測ることができます。この特徴を活用すると、イン側のラインを走行したタイムとアウト側のラインを走行したタイム、それぞれを比較することができます。毎回同じラインを走るのではなく、ラインを変えてそのスピードを数値で確認することでベストラインを見極める練習になるということです。
また、馬場選手は部分練習が大切だと言います。
「コースの走行状況によりますが、自分は練習時は基本的にセクション練習しかしていません。というのも、モトクロスは各セクションの組み合わせが大切なのですが、速く走るためにはまず一つ一つのセクションタイムを上げていくことが重要になってきます。自分のスピードが遅いセクションを見つけたらそこを重点的に練習していくことで、全体のタイムも上がっていきます。ただ、部分的に練習してタイムが上がっても、1周を通して走るとスムーズに走れないということもあります。そのため、セクション練習とはいえ、前後の繋がりも考えながら練習を重ねることが大切です」(馬場選手)
① 3コーナー:タイムがそこまで変わらないならイン側がベター
1つ目のセクションは3コーナーです。スタート地点から坂を上り、下り坂でスピードを乗せた後にあるため、伊澤はスピードを落とさないままアウト側のラインを使用して走行していました。そのラインでのタイムを計測してみます。
コーナーに入る手前でスタートし、コーナーを出た先で再度スイッチを押してストップ。数周計測した中で出た区間ファステストタイムは6.19秒でした。
ここで馬場選手にベストラインを聞くと、イン側のラインがベターだと言います。
「アウト側の方がスピードに乗って速いように感じるのですが、今日は路面がベスコンではなく、コーナー出口も滑りやすいため、アウトでもインでもタイムに差が出ません。そのため、どちらかというとイン側の方がメリットが大きいです。コーナー後のセクションを見ると、コーナー出口にはジャンプがあって、その先もすぐにタイトな右コーナーがあります。つまり、アウトでスピードに乗ってもコーナー後のジャンプの斜面と次のコーナーで減速するんですよね。コーナー出口で同じように減速し、タイムに差が出ないのなら、距離の近いインを選んだ方がベターという考え方です。
もちろん、もしイン側のラインが荒れていて、インに入るためにスピードを落とさないといけないかつアウト側がグリップして走行できるなら、アウトを選びます。ここは状況に応じてラインを見極めるところですね」(馬場選手)
実際にイン側を走ってみるとそのタイムは6.22秒。0.3秒の差がありますが、ここで無理して攻めるよりはタイム差が開きやすいコーナーで攻める方が良いとのこと。
インを走ったものの、イン側に入るために減速してしまい、アウト側よりも遅いスピードで曲がっていました。これはスムーズに乗れていない証拠。イン側ラインを走行するにあたって、よりタイムを詰められないのか聞いたところ、イン側ラインに入るための手前の走行ラインも重要だと言います。
「今は手前の直線をイン側寄りで走ってきて、コーナーでイン、コーナー出口でアウトに膨らむ(イン→イン→アウト)というラインで曲がっています。しかし、コーナーにアウト側から進入する(アウト→イン→アウト)ことでよりスムーズに走ることができます。見ていると、イン側に入るために減速してしまい、アウト側よりも遅いスピードで曲がっていました。もちろん減速は重要ですが、なるべくスピードを落とさずに曲がりたいです。イン→インという流れで入ると、コーナーへの進入角度が鋭角になり、必然的にスピードを落とす必要が出てきます。一方、アウト→インというライン取りを行うと、コーナーのRが緩やかになり、スピードを落としすぎなくても曲がることができます」(馬場選手)
いざアウト→インのライン取りを実践してみると、6.17秒。アウト側を走った時よりも0.2秒タイムが縮まりました。たったの0.2秒と思うかもしれませんが、これが何周も重なれば段々と差が大きく開いていきます。また、アドバイス通り走ったことでスピードを殺さずコーナーに入ることができたため、その後のセクションへの繋がりもスムーズになりました。
② 7コーナー:インからスピードを乗せていく
2つ目のセクションは7コーナーです。坂を上りながら進入するコーナーで、アクセルを戻しただけでも減速することが特徴です。さらに、コーナーの後も上り坂になっているため、コーナー出口でさらにスピードを乗せていくことが求められます。
アウト側とイン側どちらが速いのかを計測してみると、アウト側は6.47秒、イン側は6.37秒という結果になりました。つまりイン側の方が速いラインということがわかります。
「まず路面状況を見ると、7コーナーもアウト側のラインが砂で滑りやすくなっています。グリップが弱いとタイムロスに繋がるので、ここはイン側を選ぶのがベストです。
コーナーに入る時のポイントとしては、進入速度を落としすぎないことが大事になってきます。上り坂のためアクセルを戻しただけである程度減速できるので、これを活用していきます。また、コーナー後の上り坂に向けてスピードを乗せていくことを意識したいです。イン側から入ってイン側に出ていくというコーナーのRがキツくなるライン(イン→イン)ではなく、インからアウト側に出ていくライン(イン→アウト)が理想です。出口ではマシンをバンクにかすめるくらいが良いと思います。当てても良いのですが、バンクに当てるとスピードが落ちてしまうので注意が必要です。
なぜアウト側に膨らむのが良いかというと、イン→インというラインは一見タイトで距離も短く速そうですが、コーナーのRが鋭角になり、実際に走ってみるとスピードが乗りません。そのため、インからアウトへと膨らむラインを取ることでコーナー出口のRをゆるくして、その後もスピードを乗せやすくします」(馬場選手)
指導の通り、イン→アウトのラインを意識して走ってみるとタイムは6.29秒。アウト側と比べると0.2秒、イン側でも0.1秒ほど縮まりました。しかしもっとタイムを縮めるために見るべきポイントがあるのだとか。
③ 6コーナー:7コーナーへの繋がりを考えたライン取り
「7コーナーでは出口のRを緩やかにすることを目的に、インからアウトというラインを取っています。ここだけでも効果は見えますが、その前のコーナー、つまり6コーナーからの繋がりを考えることでさらにスムーズに走ることができ、タイムが縮まります」(馬場選手)
どのようにラインを変えるべきなのか、馬場選手と伊澤の6コーナー後のジャンプ着地の跡を見ると一目瞭然です。伊澤は6コーナーをアウト側に膨らむラインで走っているのに対し、馬場選手はイン側に着地の跡があることがわかります。その位置は1mほど異なります。馬場選手によるとここは7コーナーへの繋がりを意識して選んでいるとのこと。
「伊澤さんのラインで7コーナーに入っていくと、7コーナーの進入はイン側に寄っているため進入角度が緩やかではなく、スピードを落として入らないといけなくなります。そこで、6コーナーではアウトに膨らまずインに入ることで、7コーナーへアウト側から入るようにします。進入のRも緩やかにすることでスピードを乗せたままコーナーに入ることができます。このように、部分練習で1つのコーナーを練習する中で、走りにくさやタイム向上が見られなかった時は、その前後のセクションとの繋がりが上手くいっていないことがあります。先に話したように、各セクションをどう組み合わせるかでライディングやスピードが変わってきます。6コーナーでスピードを上げるためにアウトに膨らむこともわかるのですが、ここでは次のために抑えて、丁寧にラインを取っていくことが大切です」(馬場選手)
実際に6コーナーのラインを変えて走ると効果てきめん。イン側から進入していた時はブレーキを踏んでいましたが、アウト側からコーナーに入りRを緩やかにすることで多少スピードがあってもブレーキを踏まずに突っ込んでいくことができ、明らかに進入速度が速くなったことを実感しました。
実際に教わったラインで走行し、6コーナー出口から7コーナー出口からのタイムを計測すると5.62秒。最初のタイムより0.8秒ほどタイムが上がっています。
部分練習の成果をラップモードで測る
各セクションのタイムを縮めることができたら、それぞれのラインの繋がりを意識して1周全体の走行タイムを測っていきます。今回教わったことをもとに、3つのコーナーの走行ラインを意識して走ったタイムは……1分20秒54。なんと3秒もラップタイムがアップ! 練習の成果がしっかりと見られました。
今回は3つのコーナーに焦点を当ててライン取りの考え方、そのテクニックを教えてもらいました。クロスラップを使えば、1周全体のタイムはもちろん、セクションごとのタイムも測ることができるため、部分練習も1人で行うことができます。選手権に出る人はもちろん、レースに出ないライダーも、気軽にタイム短縮に励むことができます。目標を持って練習を重ね、結果が目に見えた時の達成感はモトクロスの楽しさの一つ。ぜひクロスラップを使ってモトクロスをさらに楽しんでください。